サルヴェール先生のレッスンを受講して

西城 志乃|宮城三女OG合唱団/合唱団Clair

*エストニアの合唱団との出会い~音楽で世界とつながりたい~*

私たちが歌う中で大切にしていることは「国境のない音楽で心の交流を」ということです。高校在学中からこれまでにフィンランド、ロシア、ルーマニア、スペイン、韓国を訪問し、現地の合唱団とのジョイントコンサートやホームスティを通して、交流を重ねてきました。“現地の言葉”で“現地の人々”と歌うことにこだわり、音楽を共有することで互いが笑顔になり、自然と心が通い合う喜びを感じてきました。

2009年7月。私たちに運命的な出会いがありました。それはエストニアを代表するエレルへイン少女合唱団との交流です。仙台公演で、幸運にも私たちは同じステージで歌うことができました。美しい歌声に我が身が包まれる感覚は今でも忘れることができません。独特な発声や豊かな抑揚、ロイトメ先生の指揮と一体になった音楽性の素晴らしさを感じました。

彼女たちは私たちに更なる合唱の魅力を教えてくれました。世界に目を向ければ、未だ見ぬ音楽との出会いがたくさんあるのだと確信を持たせてくれました。私たちは音楽を通じて世界ともっとつながりたいと思っています。

*サルヴェール先生のレッスンから学んだこと*

今回、サルヴェール先生が来日し、ワークショップを受けることができてとても光栄に思います。

 

最初に私たちのレパートリーの中から日本の童謡を演奏しました。サルヴェール先生は知っていると頷きながら、「Beautiful」と拍手をしてくださいました。その後のレッスンでは、私たちの声を聴きながら、必要なトレーニングをその都度考案し、ご指導していただきました。サルヴェール先生が私たちに求めたことは「体に息を入れること」「脱力すること」「仲間と聴きあうこと」でした。

 

●体に息を入れること

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右胸を押さえて、右肺にだけ息を入れるつもりで膨らませる→シュッと勢いよく息を出す
左胸を押さえて、左肺にだけ息を入れるつもりで膨らませる→シュッと勢いよく息を出す
両肩を上から押さえて、背中に息を入れるつもりで膨らませる→シュッと勢いよく息を出す
下腹を押さえて、下腹にだけ息を入れるつもりで膨らませる→シュッと勢いよく息を出す

 

意識して体のあらゆるところに息を深く入れることが大切ということでした。体の中に深い息がなければ、充実した響きのある声は出ないということがよくわかり、私たちは体が温かくなるまで呼吸のトレーニングを行いました。

●脱力すること

口の中でガムを噛んでいるように口を動かす
「ブー」と息を出し、唇を振動させて、唇を柔らかくする
肩を上げて、一気に力を抜いて脱力する

 

体に力が入っていては、柔らかい声は出ません。それだけでなく、無理に高い音や低い音を出してしまうことにもなり、声帯にも負担をかけてしまうということでした。

●仲間と聴きあうこと

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二人が向かい合って、顔を見ながら歌う
三人で輪になって、声をよく聴きあいながら歌う

 

指揮者がいなくても、お互いに顔を見て聴きあって歌うことが大切であるということでした。向き合うと自然に「チューニングしよう」という意識が生まれ、聴きあうことで音質を合わせることができます。

レッスンでは、最前列に並んでいた3人が次々に前に出て歌いました。私もその1人となり緊張してしまいましたが、実践してみると、向かい合って歌うことでいつも以上に合わせようという意識が高まり、不思議なことにどんどんピッチや音質が合っていくのがわかりました。

サルヴェール先生は指導の中で「意識して」という言葉を常に口にしていました。自分の声をよく聴くこと、隣の人の声をよく聴くこと、仲間とつくるハーモニーをよく聴くこと。大切なことは自分の声が周りの人に溶け込んでいるかを常にアンテナ高く、意識することであると学びました。そして、このように相手を意識して聴くことは、お互いに仲間への思いやりがなければできないことです。サルヴェール先生は「もっと聴きあって」という言葉で、私たちに仲間の声を何度も意識させていました。「この仲間でなければつくれないハーモニーをつくりなさい」という言葉が心に残っています。今回のレッスンを通して、今、ここにいる仲間を大切に、共に合唱できることに感謝して、歌い続けたいと感じました。

次回は是非エストニアの地で又サルヴェール先生にお会いしたいと思います。そして合唱の国エストニアの地に、私たちの歌声を響かせる日が来ることを心待ちにしています。

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