コラム
Columnダンスで繋がる喜びの輪
友人より、「UNIKというベルギーのダンサーのユニットが仙台に来るんだけど、何方か受け入れてくれる方いないですか?」という呼びかけに興味を持ったのが始まりでした。多少なりともダンスに関わりを持っている者としては、せっかくプロのダンサー達がこの仙台の地まで来てくれるのだから、その機会を最大限に活用しない手はないだろう。と、今までそのような企画などしたこともない私が、後先かえりみず受け入れを承諾していました。しかも、実施日まで1カ月半弱しか時間が無い中でした。
仙台での受け入れ期間は10月20日と21日の2日間。早々に2日間午前と午後の2つずつ計4つのワークショップの実施場所が決まりました。そして各会場の実行責任者がそれぞれにその内容を検討し、また時々お互いの進み具合を確認しつつ進めていく、という形で始まりました
私は主に20日の夜のワークショップの実行責任者としてイベントを企画しました。他の3か所のワークショップは小学校、高校、体操クラブ主催のもので、対象者のほとんどが子供であったため、大人の、しかもダンス経験者が満足できるような内容のワークショップにしたい。という思いで進めていきました。しかし、ダンスと一口に言っても多種多様なジャンルがあり、まず、どのジャンルの、どの位の技術レベルのダンサー対象のワークショップにするか…いったいダンサー達はどのような内容や経験を望んでいるのか…など、なかなか的を絞ることができず時間が過ぎて行きました。他の3か所は着々と詳細が決まっていく中、なかなか進まない自分の企画イベント。刻々と時間は過ぎる中、焦りを感じつつも的を探し続けました。自分はこの企画を通していったい何をやりたいんだろう…?どういう場を作りたいのだろう…?自問自答の日々が続きました。そして一つの答えが出ました。 この企画の目的、つまり意図は、«ダンスを通じて心を通わせ、みんなが一つになることだ。»
「ダンスの経験のある人も無い人も、どんなジャンルの人も、年齢も、性別も全ての境界線を越えて、ただ、その場で自由に身体を動かすことでみんなと繋がり、楽しむ。」という目的の為にダンスをしませんか?と、友人たちに声をかけ参加者を募りました。結果、平日にも関わらず35人もの経験者、未経験者、様々なジャンル(ジャズ、ヒップホップ、モダンダンス、クラッシックバレエ、アフリカン、新体操、よさこい、ヨガ等)、また高校生から50代の男女が一同に集まりました。
ワークショップはコンテンポラリーダンスで、ダンサーの作った振りを少しずつ参加者に写し、音楽に合わせて完成させていくというものでした。振り自体はそれほど技術のいるものではない為、ダンス未経験者でも十分についていけ、またそれでいて、経験者にとっても動きでのある振りでもあり、十分に手ごたえを感じているようでした。リーズとジョジョの2人のダンサーによる2種類の振付を30分ずつ振り写しをしながら踊り込むこと1時間余り。初めは「見学だけ…」と言ってはにかんでいた人もみな汗だくになって、この会場で初めて会ったばかりの初対面の人達がみんな1つになって、心を通わせながら繋がった熱気あふれる時間でした。
「心を通わすのに言葉は必要ない。」そう実感した時間でもありました。その後のセッションタイムでは、各自それぞれのジャンルのダンスを出し合い踊りの輪を作り交流する様は、みんながこの場を、ここで知り合った仲間達を歓迎し、その喜びを自分の得意なダンスで表現している様に感じました。参加者全員が異常な興奮状態の中でこのイベントは終了し解散となりましたが、みんなと別れるのが名残惜しいのか、参加者の半分以上の人達が平日にも関わらずUNIKを囲んでの打ち上げに参加し、夜中2時まで盛り上がりました。その席で一番多く聞いた言葉が「すごく楽しかった。ありがとう。」でした。この言葉を聞けただけで、私の意図は達成できた。という充実感で一杯になりました。
他の3つのイベントにも同行しUNIKと行動を共にした中で感じたことは、彼女らはどのような対象者であれ、あっと言う間に魔法をかけ、彼女らのペースに引き込むことが出来る。そして参加者が笑顔と共にダンスを楽しみ、気付いた時には会場の参加者全員が夢中になっている。ということです。UNIKのダンスにはダンスの原点を見ることが出来ました。「ダンスは身体を使ってのコミュ二ケーションなんだ」。ということです。
UNIKと共に過ごした2日間と言う短い時間は、とても濃厚な時間でした。4人のメンバー1人1人がとても人間味溢れる人格で、温かくウエット。おまけにユーモアに富んでおり、笑いが絶えない2日間でした。この2日間は身体と心を解放し、リラックスすることが出来た時間となりました。きっと、多くの参加者が私と同じ感覚を持ったことでしょう。改めて「ダンスは良いな。」と思い直した時間でした。
国境を越えての交流は言葉の壁が立ちはだかります。しかし、今回の様に言葉を使わないコミュ二ケーションの方法での交流は可能なのだ、ということ。そして、その方法の方がより深いところでの心の交流を可能にする、ということを実感しました。ダンスの後の参加者の爽快な笑顔が忘れられません。
最後に、EU・ジャパンフェスト日本委員会のご支援に感謝しつつ、また今後も益々このような「心を元気にする」企画に、継続支援して頂くことを切に希望いたします。
◎第19回EU・ジャパンフェスト:「ダンスグループ・ユニック:東北公演・ワークショップ」プログラムページは コチラ