2021年に向けて折る折り鶴

ウラジミール・ラドマノヴィッチ|欧州文化首都ノヴィ・サド2021 モビリティ・プログラム・コーディネーター

2019年、ノヴィ・サド2021財団のチームは、2021年に向けてゆっくり準備のカウントダウン段階に入ります。準備の大部分を占めるのは日本のアーティストや文化事業関係者との助走プロジェクトの数々で、これらは私たちの運営能力を見極めるとともに、ノヴィ・サドの観衆に日本文化に関連するイベントに慣れてもらうためのものです。

 

折り紙ワークショップを開催することはまずまず簡単に決定しました。折り紙というアクティビティは幅広い人々に関心をもってもらえるため、参加者の確保の面で適していたのに加え、プロジェクトの早い段階から「2021年には、折り紙作家に依頼して、ワークショップ参加者が作った折り紙の作品を集めたものを使ったインスタレーションを制作してもらうのはどうか」というアイデアが出ていたためです。

 

2019年に折り紙ワークショップを開催すると決めた後、EU・ジャパンフェストを通じて受け取った応募の中から、若いストリートパフォーマー・折り紙アーティストのTAKAKOを見つけました。私たちはTAKAKOさんのカラフルなプレゼンテーションを見てすぐに心を惹かれ、春休みの直前に「4月にノヴィ・サドに来ていただけませんか」とEメールを送りました。幸いにも、TAKAKOさんは喜んでノヴィ・サドに来てくださいました。

二週間の滞在中、TAKAKOさんが開催した11回のワークショップには、幅広い年齢層の約200名が参加しました。最も熱心でおしゃべりだった最年少の参加者は幼稚園に通う子どもたちで、英語とセルビア語両方を使ってTAKAKOさんと積極的に交流しながら、簡単な折り紙に挑戦しました。日本の子どもたちは4、5歳の小さいころから折り紙を折り始めることも知りました。

 

小学校の積極的な協力のおかげで、多くの児童がワークショップにやってきました。10代前半の子どもたちもとても熱心に取り組み、完璧な鶴を折ろうと奮闘しました。全員がうまく折れたわけではありませんが、確実に言えるのはみんな折り紙を楽しんだということです。初めて日本から来たゲストであるTAKAKOさんは子どもたちからセレブリティ扱いを受けました。子どもたちがTAKAKOさんと一緒に撮った写真が何枚FacebookやInstagramでシェアされたことでしょうか。

 

できるだけ多くの日本文化に興味を持つ人たちに参加を呼びかけるために、「Mirai」という日本文化を広める活動を行っている地元の団体に協力を仰ぎました。シヴィララ文化ステーションで開催されたMiraiのメンバーや関係者を対象にした特別ワークショップで、参加者は折り紙の夕べを楽しみました。このイベントへの関心は非常に高く、オンラインでの参加応募がたったの2日で定員に達してしまうほどでした。このため、今後の折り紙ワークショップをMiraiと共同で開催する案が出されています。

 

Miraiからは折り紙以外の面でも協力を受けました。Miraiの代表者数名とシヴィララ文化ステーションのマネージャーの一人は、TAKAKOさんをノヴィ・サドから15キロほど南東にあるフルシュカ・ゴーラ山の上の美しい小さな街、スレムスキ・カルロヴッツィの見学に連れて行ってくれました。

可能な限り多くの人にTAKAKOさんのワークショップに触れてもらうため、「欧州文化首都ノヴィ・サド2021」と「欧州青少年首都ノヴィ・サド2021」が共同で設立した「ノヴィ・サド・ボランティア・プラットフォーム」で活動するボランティアとの大規模なミーティングの中でも折り紙ワークショップを実施しました。このプラットフォームには年齢の異なる数千人の登録ボランティアが在籍しており、社会責任を果たそうとする幅広い層の人々を包摂しています。ノヴィ・サド大学の学生から、「自分の街の文化生活に参加・貢献したい」という60代、70代の退職者まで、ボランティアの背景は多岐にわたります。

さらに、「欧州文化首都ノヴィ・サド2021」プロジェクトに従事する人たちに向けて、ノヴィ・サド2021財団のオフィスでも特別ワークショップを開催しました。お互いの折り紙のスキル(またはその欠如)をからかいあうリラックスした雰囲気の中で、私たちは欧州文化首都プロジェクトにむけてどのように準備を進めるか、そして2021年にどんな計画を実施するかについてTAKAKOさんと話し合いました。結果として、この折り紙ワークショップは意図せずチームビルディングのイベントにもなりました。

 

晴れの日もあり、雨の日もありながら(幸いにもTAKAKOさんは雨が大好きでした)、4月の日々は過ぎていき、私たちのプログラムとTAKAKOさんの滞在は終わりに近づいてきました。約200人との11回のワークショップ、地元のテレビやラジオのインタビュー、地域の見学、文化に関するディスカッション、折り紙の折り方、日本語の1から10までの数え方、そして、「Thank you」と「ありがとう」の詰まった、心動かされる電話でのやりとり。EU・ジャパンフェストとノヴィ・サド2021財団の協力関係で行われた初の助走プロジェクトは、成功裏に終了しました。しかし、これはほんの始まりに過ぎません。さらにいくつかのプログラムが年内に予定されていますし、2020年と2021年の折り紙ワークショップについても考え始めなくてはなりません。大きなインスタレーションを制作するために、これまでに約250個の折り紙作品が集まりました。プロジェクトの象徴として2021個を集めるのが目標ですから、まだまだ長い道のりです。しかし、ノヴィ・サドにさらに日本のアーティストや日本文化を迎えられるという意味では嬉しいことでもあります。