音楽を通じた文化の懸け橋

アンジェラ・アデール|タルトゥ2024財団 教育プロジェクトコーディネーター

大陸を超えて、エストニアのタルトゥの中心部を舞台に、理解のシンフォニーが花開きました。2024年4月1日から3日にかけて、坂本夏樹氏、桜井しおり氏、高瀬真吾氏で成る日本のアーティスト集団おとみっくと、タルトゥ・ラアトゥース学校の4年生から9年生の生徒ならびにタルトゥ2024財団による独特なコラボレーションにより、音楽を中心とした3日間の文化交流プログラムが繰り広げられました。

本プログラムは、まるで心を込めて作曲された作品のごとく展開していきました。各日ともにアイスブレイクセッションに始まり、音楽が文化間の隔たりの懸け橋となりました。すでに日本への関心が芽生えている子供達も数名いるなか、生徒達は、双方向型のアクティビティを通して、日本の歴史や文化に触れました。遊び心に満ちた日本の童謡「うみ」を一緒に習ったことは、文化的没入体験への素晴らしい第一歩となりました。

しかし本プログラムは、単なる伝統の称賛に留まらず、持続可能性も取り入れられていました。ハイライトとなったのが、楽器の創作で、これは金属を鍛造したり、木を彫り出すのではなく、廃棄素材から創られました。この環境に優しい取り組みは、生徒達の心に深く響き、好奇心や豊かな発想力への感嘆の念を掻き立てました。異なる背景や経験を持つ個人同士のコラボレーションが、新たな発想やアプローチの発現に繋がり、より多様かつ実り豊かな作品が生み出される結果となったのです。このプロセスにおいて、生徒達の創造性や適応力を目の当たりにできたことは、実に印象的でした。

Workshop in Raatuse school ©︎ Rene Leiner

連日、熱心な練習会が繰り広げられました。生徒達は、秋田県民謡「ドンパン節」の活気溢れるリズムに奥深く取り組み、手話を通じてエストニアの民謡「Juba Linnukesed」の美しさを探求しました。作曲を行うためにチームが組まれ、コラボレーションに焦点が置かれました。生徒達は、自作の楽器を手に、日本の童謡や民謡のメロディーやリズムに取り組み、一緒に言語の壁を超えた音のタペストリーを織り上げました。

この協働的取り組みの成果は、3日目に訪れました。最終的な練習会を経て、生徒達は、仲間を前に堂々と自分達の音楽作品を発表しました。新たに発見した日本文化に対する認識を表現する彼らの熱意には、心温まるものがありました。今回の文化交流は、学校の壁を飛び超えて広がりをみせ、生徒達は、肖像画イベントの開会式でも演奏を披露し、より幅広いコミュニティとの結びつきを強固なものにしました。

本プログラムがもたらした影響を振り返ると、達成感が心に響きます。当初の聴き慣れないメロディーへの戸惑いが溶け去り、日本への純粋な愛情が花開いたのです。

事後の取り組みとして実施したエンゲージメント活動が、この文化的没入体験を深めました。生徒達は、鮮やかな芸術作品を通じて、日本文化で重要な象徴とされる桜の花について探り、その重要性への理解をより深めました。

本プロジェクトがもたらした影響は、文化的理解だけに留まりませんでした。リサイクル素材から楽器を創作するという行動は、生徒達に環境への意識を呼び起こしました。彼らは日常生活において、環境に優しい行いを取り入れることの重要性を認識し、環境に積極的に貢献することへの喜びを感じていました。このことは、自分達の人生に持続可能な実践を取り入れようという個人的な決意となり、我々の地球に対する自己効力感と責任感を育むことに繋がったといえます。

Concert by Otomic in Tartu ©︎ Maanus Kullamaa

一方で、今回のコラボレーションでおそらく最も充実した側面といえたのが、友情とチームワークの芽生えです。生徒達は、協働の持つ力を発見し、お互いを尊重し、自分達の多様な背景を称えることを学んだのです。これは彼らの今後の活動において、かけがえのないスキルとなることでしょう。

今回のコラボレーションそのものが、特筆に値するといえます。日本人アーティストと協力して取り組んだことが、本プログラムの成功の礎となったことが証明されました。日本文化を直接的に触れることで、教科書やビデオなどの制約を超えて、双方のより深い理解が育まれました。文化交流は、単なる理論的なものに終わらず、創造的発想の活発な交流となりました。日本の伝統や音楽性がインスピレーションとして作用しただけでなく、生徒達は、それらを巧みに自らの文化的基盤に織り交ぜ、独特かつ実り豊かな芸術表現を生み出したのです。

今回の経験は、言語を超えたコミュニケーションに秘められた力を浮き彫りにしました。音楽と芸術が共有言語となり、文化的相違を超越した感情や繋がりを育みました。馴染のない存在に直面した生徒達は、驚くべき適応力と豊かな発想力を見せつけ、文化的隔たりを埋める独創的な解決法を見出したのです。

今回の日本とエストニアのコラボレーションは、単なるプログラムを超えた役目を果たし、文化の懸け橋となりました。それは理解を育み、環境への意識を培い、チームワークへの情熱を燃え立たせました。将来的な観点から、このコラボレーションは、有望な手本を示しているといえます。芸術や音楽を通じて繋がりを育むことにより、私達は異文化間理解の懸け橋を築き続けることができ、それは人生を豊かにし、未来世代の心を動かします。理解の懸け橋を築き、私達が分かち合う人間性の美しさを尊ぶよう未来世代を鼓舞していくために、音楽を鳴り響かせ続けていこうではありませんか。