コラム

第29回シビウ国際演劇祭が幕を閉じました。6月24日に開幕した今回の開催では、プログラムに盛り込まれた800を超える企画と、75ヶ国からシビウに集まり、80もの会場で展開されたイベントに出場した3,500名を上回る参加者が含まれました。今年のフェスティバルのテーマは、「BEAUTY!（美！）」。極めて多彩な展示のなかには、『The Magnet Sky（マグネット・スカイ）』と『Horizontal Newspaper』や『A Totem to Frumiria』をはじめとしたインスタレーション作品が、ピアタマーレ（大広場）からプロメナーダ（ショッピングモール）まで、街じゅうに創造性とともに散りばめられ、その多くが、フェスティバル会期中を通じて日夜を問わずいつでも鑑賞可能となりました。

数十に上る演劇公演と幾万人もの観客、何百分におよぶ拍手喝采およびスタンディングオベーション、感動と喜びの涙が、劇場から市場、街路、シナゴーグ（ユダヤ教礼拝堂）、そして寛大にも私達を受け入れてくださったシビウのコミュニティーの他の場所の数々にいたるまで、さまざまな空間を舞台に、今年も本イベントが放つ不思議な力の一部を成していました。

過去最多のイベントが屋外スペースで実施され、入場無料で一般客に開放されたことにより、10日間にわたって、シビウにいた圧倒的な数の人々の心を喜びで満たしました。このほか、バラエティに富んだコンサート、ファイヤーパフォーマンス、ストリートシアターパフォーマンス、ダンスパフォーマンス、サーカス、空中アクロバットなどが、熱烈な大喝采を浴びました。建築家、芸術家、マネージャー、クリエイター、文化ファシリテイター、大使、著者、ジャーナリスト、演劇評論家、インフルエンサー、政策決定者など、それぞれの分野で最も重要な専門家をお招きした、数十におよぶ特別イベント、カンファレンス、新刊発表記念イベントも開催されました。

2022年は、コルト社に快く参画いただいたイニシアチブにより、シビウ国際演劇祭（以下略称FITS）がフェスティバル会期中を通じて宝探し体験をお届けする最初の年となりました。

また今年のFITSでは、オンラインプレゼンスの観点でも、目を見張る数字を記録しました。全く初めての取り組みとして、TikTok（ティックトック）とのパートナーシップを土台とし、FITSではこのプラットフォームのユーザーに向けて初の演劇公演をライブ配信し、これに加えて本フェスティバルの一環で行われた他の4つのイベントをお届けしました。10日間のフェスティバル会期期間中、TikTokで#magiaFITSのハッシュタグが合計で百万回を超える閲覧数を獲得し、15万人のユーザーが5つのライブ配信を視聴しました。FITSのモバイルアプリには1万回ものアクセスがあり、またこの10日間に、FITS公式ウェブサイトには7万人を超えるビジター数が確認されました。今年のもうひとつのプレミア開催となった、7回シリーズで成るFITSトークは、これまでにFITS公式Instagramチャンネル上で、2万回の動画再生数を集め、5万人のユーザーが投稿やビデオを目にし、さらに60万人のルーマニア人がFacebookでFITSによる投稿を閲覧しました。

このほか、ひときわ特別なイベントとなったのが、6月24日にシビウに新しく開設されたNTTデータルーマニア本社の落成式でした。この式典は、シビウ国際演劇祭の公式オープニングイベントとの同時開催で開かれました。このプログラムには、大阪の山本能楽堂による見事なパフォーマンスが盛り込まれました。これは伝統的な日本芸能の最も古い様式のひとつで、ユネスコ無形文化遺産に登録されている能楽を今に伝える舞台です。能楽はおよそ700年前に誕生し、現存する世界最古の形式の仮面劇で、日本の文化的アイデンティティの形成において、極めて重要な役割を果たしています。　

来賓のなかには、駐ルーマニア日本国特命全権大使の植田浩閣下、文化大臣のルチアン・ロマシュカヌ氏、ならびにルーマニア当局および文化コミュニティーの重要な代表者、そしてNTTデータ社の経営幹部の役員の方々の姿がありました。NTTデータルーマニアCEOのマリア・メッツ氏、NTTデータ代表取締役副社長の西畑一宏氏、シビウ国際演劇祭の総合芸術監督がこれらのゲストを歓迎し、イノベーションおよびテクノロジーと、日本の芸術文化が溶け合った趣を披露しました。

今回は、これまでで最大規模の開催となっただけでなく、私達、つまり私とフェスティバルチーム全体に、この上ない大きな喜びと充実感をもたらすものとなりました。私は、人々が芸術を求めて、信じられない数の人々が群れを成してともに集い、一斉に「美」を呼吸する光景を目の当たりにし、また、現在すでに準備を進めている今後のFITS開催の土壌を築くであろう、記憶に残る数々の出会いの機会に恵まれました。

私達のすべてのパートナーにお礼申し上げます。これらの方々の存在なしに、この奇跡は起こり得ませんでした。そして私達に恵みの賜物をくれたアーティスト達、フェスティバルチーム、来る年も来る年も私達からのハグを受け止めてくれるシビウのコミュニティー、そして何にも増して、国王陛下である国民の皆さんに、感謝の意を捧げます！

第30回シビウ国際演劇祭は、2023年6月23日から7月2日の会期で開催されます。

シビウでお会いしましょう！