コラム
Column共に歩む道/国際現代アートプロジェクトにおける日本とハンガリーの協力
欧州文化首都ヴェスプレーム・バラトン2023 (VEB2023 ECoC) プログラムの枠組みの中で、 ヴェスプレームハウスオブアート のスタッフは、シーズン中に62の展覧会を企画し、そのうち52プログラムが当館の会場で開催され、6万人以上の人々がヴェスプレームの現代アート及び文化施設を訪れました。VEB2023 ECoCプログラムの地域および国際的なつながりとともに、アートプロジェクトが都市や国境を越えて実施されることが可能になりました。私たちの展覧会や出版物は、アンカラ、ウィーン、デュッセルドルフ、ニューヨーク、パリ、東京、そしてヴェネツィアにも巡回しました。ヴェスプレーム・ ハウスオブアートは、2023年を27カ国との国際協力で締めくくりました。
ヴェスプレーム・バラトン2023のプロジェクトにおいて、私たちは、通常のヨーロッパ圏の交流に加え、さまざまな芸術分野におけるヨーロッパ圏外の文化との交流を確立する重要性を認識しました。アルゼンチン、ブラジル、インド、ペルー、アメリカのプロジェクトパートナーと共に展覧会やプログラムを開催することに加え、ヨーロッパにおける日本文化と芸術の普及は、国際的な専門家のネットワーク構築という分野において、私たちにとって最も重要な活動のひとつとなっています。 EU・ジャパンフェスト日本委員会 と 国際交流基金 の協力を得て、私たちは 日本ハンガリー陶芸プロジェクト『ウェイズ・オブ・アース(Ways of Earth)』 を実現する機会を得ました。これは2022年に始まった過去2年間にわたり日本とヨーロッパの文化の繋がりを探求する新しいニッチなアートプログラムの始まりを示しており、また、現代アートのさまざまな側面についての共同の考察も始まりました。

日本の陶芸の伝統において、土地、風景、自然環境との有機的な繋がりは、今なお重要な意味を持っています。異文化交流プログラム『ウェイズ・オブ・アース』は、このような観点から、ビジュアル・アーティスト、ネーマ・ユリア のキュレーション・コンセプトに基づいて、 ディレクターのグラースリ・ベルナデット、 オフィス・マネージャーのマリアン・ソロスのプロジェクト管理のもと、創造的な対話を開始しました。日本からは、美濃の陶芸文化の現代的な代表者である阿曽藍人と日置哲也、学芸員の林いづみ(岐阜県現代陶芸美術館)、ハンガリーからは、陶芸家のユリア・ネマ、写真家のアコシュ・チガーニー、地理学者のバルナバ・コルベリが共同作業に参加しました。ヴェスプレーム・バラトン2023『バラトンEYE』 のレジデンス・プログラムを通して、アーティストたちが互いを知り合い、美濃とヴェスプレーム ・バラトン地域の文化的・芸術的伝統を学ぶことが出来ました。彼らは共に風景を旅しながら鉱物を集めたり体験を共有し、共同展のための新作を制作しました。この展覧会は、2024年5月にヴェスプレームで開催され、その後、『清流の国ぎふ』文化祭2024の公式プログラムとして2024年10月に多治見市、岐阜県現代陶芸美術館で展示され、2024年11月には東京のリスト・ハンガリー文化センターのグループ展で紹介されました。現代陶芸プロジェクト 『ウェイズ・オブ・アース』は、岐阜県現代陶芸美術館、 ヴェスプレーム・ハウスオブアート、 バコニーバラトン・ユネスコ世界ジオパークの協力のもと、ヴェスプレーム市、EU・ジャパンフェスト日本委員会、国際交流基金の支援を受けて実現しました。この大きな協力のおかげで、私たちは岐阜県現代陶芸美術館のプロフェッショナル・パートナーとなりました。2024年にヴェスプレームと多治見、東京で開催される展覧会のレガシーとして、現代美術と教育の分野で日本とハンガリーのアーティストの参加を支援する共同アーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムを企画する予定です。2025年には、海外アーティストとハンガリー人アーティストがヴェスプレームを訪問し、プロジェクト・ウィークの期間中、ヴェスプレームで生活しながら制作活動を行う予定です。ハンガリー人アーティストに加え、このレジデンスプログラムでは日本人アーティストも受け入れ、彼らはヴェスプレーム・ハウスオブアートのスタジオで制作する機会を持ちます。また、夕方に開催されるトークでヴェスプレームの観客にも紹介される予定です。美大生のための夏期大学プログラムの一環として、ワークショップも開催されます。アーティストレジデンスプログラムの締めくくりは、ハウスオブアートとヴェスプレーム-バラトン地域でのユニークな会場での展覧会です。

昨年スタートした日本・ハンガリー写真プロジェクトでは、 国民文化祭の開催地である岐阜県の価値を探る取り組みの継続として、日本の中部地方の文化・自然遺産を探訪しました。また、EXPO2025 大阪万博に関連して、4月から10月にかけて、ハンガリーのいくつかの博物館や美術館の参加を得て、日本文化にフォーカスした一連の本格的なプログラム(写真展、写真集、現代ジュエリー展、教育講演会、アーティスト・イン・レジデンスプログラム)をヴェスプレーム、ウィーン、ブダペストで開催します。2024年10月には、 オーストリア文化フォーラム東京および リスト・ハンガリー文化センター東京と協力し、日本、オーストリア、ハンガリー、ドイツ、フランスの女性アーティストが参加する新しい国際アートプロジェクトを開始する機会を得ました。持続可能な開発に焦点をあてた現代アートプロジェクトにおいて、日本の文化遺産としての風呂敷と現代アートの相互関係を探求します。
私たちにとって、EU・ジャパンフェスト日本委員会からの支援は、とりわけ重要なものです。いただいた支援により、継続可能な日本・ハンガリーの現代アートプロジェクトを立ち上げることができました。このプロジェクトは、デザイン、美術、写真の分野で国際的なコラボレーションを開催し、ヨーロッパにおける日本文化とアートの発表の機会を広めています。