腰を下ろして、そして楽しむ – Sit+Read アートブックフェア2024を振り返って

デリア・ルチアン|ラ・フィグラット協会 コミュニケーション担当
Sit+Read Artbook Fair © Andrei Infinit

Sit+Readアートブックフェア2024は、創造性、友情、文化交流が詰まった、本当に忘れられないイベントとなりました。ティミショアラの歴史あるバスティオン要塞に居を構えたインデシス・アーティスト・ラン・スペースで、10月25日から27日まで開催された今年のフェアには、世界中から40以上の参加者が集結しました。ルーマニア、日本、ドイツ、セルビア、ギリシャ、ハンガリー、ブラジル、クロアチア、イタリア、ポーランドのアーティストやアーティスト集団が、アーティスト本、小冊子、コミック、イラスト、版画、陶芸といった彼らのさまざまな作品を分かち合い発表するために集まり、共に、革新性やつながり、インディペンデント・アートの鑑賞を促す刺激的な環境を作り上げたのです。

欧州文化首都として旋風を巻き起こした2023年の後、ティミショアラはそこで生まれた勢いに応えていくという課題に直面しました。今年のフェアは、Sit+Readが、移り変わるクリエイティブな環境に適応し、対応することができる強靭なプラットフォームであることを改めて証明しました。インデシス・アーティスト・ラン・スペースは、この協力的でどこか「優柔不断」ともいえる今年にとって、その名にふさわしい会場でした。今回のフェアはこの会場に移ったことによって、歴史的な街の壁として機能した場所、そして、コミュニティの中心として開かれた場所に、ギャラリーとしての新たな拠点を見つけたのです。この新しい場所は、私たちに、ティミショアラの住民とのつながりを深め、フェアを文字通り街のアートシーンの中心に位置づけさせることを可能にしたのです。

2024年のフェアは、特に日本のアーティストとの継続的なコラボレーションによって特別なものとなりました。彼らは、このイベントに新鮮な視点を吹き込み、フェアの芸術的多様性を深めました。このパートナーシップは、ファンタジー、無邪気さ、官能と激しさといった日本のアートの独特な融合に私たちが関わることを可能にし、大きな変化をもたらしました。このコラボレーションは、日本のイラストレーションとブックアートが、国内外のアーティストの視野をどのように広げることができるかを探求することを目的としていました。

今回のコラボレーションのハイライトは、Sit+Readアートブックフェアで国際デビューを飾った、イギリスと日本のアーティスト、ユーフェミア・フランクリン氏でした。ユーモアと美しさを交えながら、不安や心の混迷をテーマにした特徴的なイラストレーションで知られるユーフェミア氏は、とても魅力的な存在でした。ヴィクトリア&アルバート博物館とのコラボレーションから日本美術史の執筆にまでいたる彼女の経歴は、フルタイムの仕事とクリエイティブなフリーランスのキャリアを両立させることの複雑さを探求した彼女のトークに貴重な洞察をもたらしました。ユーフェミア氏は彼女の講演の中で、葛藤の中にユーモアを見出すことについて率直に語り、そのアプローチは他の出展者たちの深い共感を呼びました。彼女の誠実な姿勢は、燃え尽き症候群に陥ることなく創造的な活動を維持するため、プレッシャーをどのように乗り越えているのかについて、他のアーティストたちとのさらなる議論を呼び起こしたのです。彼女は、創造的な追求を「根本的なストレス」とすることなく、「楽しさ」に保つよう他の人々を励まし、彼女のセッションは多くの人にとってもハイライトとなりました。

Hiroko Hacci Dj Set @Sit+Read Artbook Fair © Codrin Unici

土曜日の夜は、まさに祝宴となりました。プログラムが終わった後の交流イベントは、皆を堅苦しさから解放し、有意義なディスカッションに没頭させ、それぞれのアーティスティックな実践活動を超えたつながりを形成する機会となりました。そこは、アーティストもビジターも一緒に、ストーリーやアイディア、夢を共有できる有機的な交流と絆を深める場所となりました。また、EU・ジャパンフェスト日本委員会との協働の機会の初期に知り合った、当協会の長年の友人であるHiroko Hacci氏との再会の場としても最適な機会でした。彼女は、最近、最新アルバム『La Notte』を、自身のバンドであるタンブリ・ネリ(Tamburi Neri)と共にリリースした人気上昇中のミュージシャンで、彼女のパフォーマンスは、イベントに喜びとノスタルジーを加え、幻想的な夜の締めくくりを運んでくれました。Hiroko氏とのコラボレーションは、音楽とビジュアル・アートの美しい接点を浮き彫りにし、インディペンデント・アートが取り得るさまざまな形を思い起こさせてくれました。

今年のフェアを振り返り、私たちは日本のアーティストとのパートナーシップを今後さらに育て、磨いていく可能性を感じています。私たちのプログラムは、いかに日本のアーティストの影響が国内外の参加者の新たな活動やコラボレーション、プロジェクトにインスピレーションを与えるかを提示しました。将来的には、ルーマニアと日本のアーティストが、それぞれの芸術的伝統に焦点を当てたプロジェクトに共同で取り組むことができるような、より対話型の双方向なワークショップや滞在型制作を取り入れることも視野に入れながら、このつながりを構築し続けることを目指しています。

Sit+Readアートブックフェアは、自主出版と創造的なコミュニティ形成の祭典として毎年開催され、アーティスト、出版社、アート愛好家がオープンに、そして率直に交流できる場となっています。毎年、私たちはアートが人々を結びつけ、文化の隔たりを埋め、新しいアイディアに心を開かせる力を持つことを再認識させられています。フェアの成長と進化、特に日本人アーティストとのコラボレーションは、インディペンデントなアートと出版が発展するための、包括的で活気ある環境を育むという私たちの役割を反映しています。

2025年の開催に向けて、日本のアーティストとのコラボレーションがどのように進化し続けるのかを見ることを、私たちは楽しみにしています。私たちは、このような異文化交流が新たなプロジェクトにインスピレーションを与え、私たちがまだ想像していないような方法でアートブックというメディアを拡大する一助となる未来を思い描いています。今年のSit+Read アートブックフェアは、単なるイベントにとどまらず、創造性、独立性、団結を携えた旅となりました。そしていつものように、この旅が私たちを次にどこへ連れて行ってくれるのか、待ちきれない思いでいます。