サボタージュー輝かしい新たな夜明け

デリア・ルチアン|ラ・フィグラット協会 副会長

サボタージュXの興奮極まる雰囲気に包まれ佇むなか、私達は、今この瞬間へと私達を導いた素晴らしい道のりを振り返らずにはいられません。先行き不透明ながらも有望な未来の幕開けを待ち焦がれる一方で、一時代に別れを告げながら、甘く切ない気持ちを感じています。

10年前、サボタージュは単一ステージの小規模な1日限りのイベントで、それはほんのアイディアの種に過ぎませんでした。当時は、このささやかな始まりが、私達が今経験している息を呑むようなスペクタクルへと展開するとは知る由もありませんでした。その道のりは長く、無数の浮き沈みに満ちていましたが、そうした挑戦こそが、サボタージュXをいつまでも記憶に残るイベントにしよういう私達の決意を燃え立たせたのです。

サボタージュは、いつのときも単なるフェスティバルの域を超えていました。本フェスティバルは、使命であり、創造性の光であり、型破りなアーティストやミュージシャンが一堂に集い、従来型フェスティバルの境界を超えた体験を創造するためのプラットフォームとしてあり続けています。過去10年間にわたり、サボタージュは、単に存続しただけにとどまらず、躍進を遂げ、私達の生活の祝祭的な要素となりました。

Phasing Waves ©︎ infi.ro

この目覚ましい時代に別れを告げるなか、私達の心には、奥深い感謝の念が湧いています。私達は、サボタージュの進化、成長、成熟を見守ってきたと同時に、私達もそれとともに発展を遂げました。過去の開催の記憶が私達の心に刻まれ、そのひとつひとつが私達の集団的歴史における独特な一章をなしています。刺激的なパフォーマンスから没入感溢れるインスタレーションアートに至るまで、サボタージュは、私達の魂に不滅の足跡を残す数多の体験を提供して参りました。

私達のステージに華を飾ったアーティストやミュージシャンらが、彼ら独自の才能と視点をもたらし、私達の視野を広げるとともに既成概念に挑みました。本フェスティバルは、創造性がとどまるところを知らず、前衛が称揚され、協働や繋がりが生まれる空間としてあり続けています。

しかし私達は、サボタージュXに別れを告げながら、先の見えない未来を見据えています。世界は刻一刻と変化し、私達が直面する課題も進化しています。とはいえ私達は、未知の世界に闇雲に足を踏み込もうとしているわけではありません。学んだ教訓や得た経験、そしてサボタージュが自分たちのなかに培った不屈の精神を携え歩んでいくのです。

サボタージュXの終わりは、新たな一章の始まりを告げるものであり、この変革は、希望と興奮に満ち溢れています。私達は、未踏の領域を探索し、アートと音楽の限界を押し広げ、感動と驚嘆をもたらす体験の創出を続けて参ります。サボタージュのコミュニティは、型破りなものへの共通の愛と、前途を切り開く決意で結ばれながら、これまでと変わることなく活発であり続けます。

サボタージュの精神は、私達の記憶のみならず、創造活動や友情、そして本フェスティバルが育んだ繋がりのなかに今後も息づいていくことでしょう。10年間にわたる素晴らしいひとときを経て、私達は今、よりいっそう素晴らしい可能性に向けた旅路へと踏み出そうとしています。

サボタージュXに日が沈むなか、私達は希望と期待を胸にその水平線を見つめています。私達には、不透明さを包容し、創造し、協働し、異端を称える用意ができています。

MultipleXity ©︎ infi.ro

2025年までのサボタージュの展望として、アートと音楽のための常設スペースとして機能する文化的ハブの設立を掲げています。この決意が揺らぐことはありません。私達は、持ち得るすべてのエネルギーを、より持続可能な明日に向けています。これはつまり、わずか3日間というスケジュールの制約から解放され、その代わりに、年間を通じた総合的なプログラムを構築することを意味します。私達の究極の目標は、毎日あるいは毎週という頻度で継続的な学びに取り組む活発なコミュニティの育成にあります。それは一時代の終わりを意味しているといえる一方で、さらに輝かしくかつ予測不可能となるであろう未来の幕開けを表しているのです。

私達は、節目となる開催に向けて、観客と深く共鳴したアーティストに称賛の意を表したいと考えていました。私達が温かな気持ちを込めて再びKyoka氏とMieko Suzuki氏をご招待し、過去数年間で最も思い出深いふたつのひとときの再現を試みたのは、そのためです。過去3年間にわたり、Hiroko Hacci氏、DJ SO氏、寺田創一氏を含む日本人アーティストへの私達の賛嘆の念が花開きました。立ち上げ当初からEU・ジャパンフェスト日本委員会よりいただいた多大なご支援に、心からの感謝を申し上げます。おかげさまで、私達の心は温かな気持ちに満たされています。そして日本を訪問し、尊敬するパートナーから学びを得るとともに、将来の私達の文化的スペースに向けて繋がりを醸成する機会を心待ちにしています。EU・ジャパンフェスト日本委員会からの変わらぬご支援と励ましとともに、私達はひとつ屋根の下で互いの文化をひとつにするため、このスペースの開設を目指しております。