カウナス、日本文化を再び歓迎する

エミリア・シャカリエネ|MBヤポニステ「日本文化週間inカウナスWA」ディレクター

第3回を迎えたフェスティバル「日本文化週間inカウナスWA」では、才能溢れる日本人アーティスト達による見事なパフォーマンスがリトアニアおよび海外の観客を魅了し、現代芸術と伝統芸術双方の愛好家のための祭典が繰り広げられました。

5月8日に開催されたフェスティバル「日本文化週間inカウナスWA」のオープニングコンサートでは、King of Kawaiiと呼ばれる日本人デザイナー、増田セバスチャン氏による華麗なファッションショーをお届けし、これにはビルテ・レトゥカイテ氏の演出のもと、カウナスAURAダンスシアターが参加しました。およそ30年にわたり、同デザイナーは、独自の創作を通じて、日本のKawaiiカルチャーの哲学を世界各地に広める傍らで、誰もが自分の色を大胆に取り入れ、表現できるようになることを目指しています。Kawaii、つまり可愛らしさは、年齢、性別、宗教、国境を問わず人々をひとつにできるというメッセージを発信する増田セバスチャン氏の作品は、同氏のアートプロジェクトやファッションショーは、アメリカ、オランダ、ブラジル、ボリビア、南アフリカ、その他各国で高い評価を獲得しています。増田氏は今年、海外での日本の現代文化の振興に寄与した功績が称えられ、日本内閣府が主催するCJPFアワード2024でグランプリを受賞しました。

またコンサートの観客は、カウナスの日本の姉妹都市である神奈川県平塚市からの特別ゲスト、歌舞伎舞踊パフォーマーの市川千代若氏と津軽三味線奏者の寂空(Jack)氏による、日本の伝統と現代の芸術を組み合わせた華やかなパフォーマンスを楽しみました。カウナスのもうひとつの姉妹都市である岐阜県八百津町の代表者である書道家はる氏と映像プロジェクション作家の市川修一氏は、書道の技と現代のテクノロジーを融合した華麗なスペクタクルを上演しました。こうしてこのオープニングコンサートは、欧州文化首都カウナス2022の伝統を受け継ぎ、毎年恒例となったフェスティバル「日本文化週間inカウナスWA」の幕開けを飾ったのです。

Hiroaki Umeda performance Intensional Particle © Arvydas Kumpis

本フェスティバルでは再び、リトアニアを舞台に、日本の前衛芸術シーンにおいて最も著名な人物のひとりである、振付家で領域横断的アーティスト、梅田宏明氏の公演を、堂々披露いたしました。同氏の作品は、その力強いエネルギーとデジタルグラフィック映像、さらに舞台上で身体の動きが生み出す相乗効果で、脈動し、人々を魅了します。自らが主宰するカンパニー「S20」を設立して以来、繊細さと激しさを持ち併せた彼のダンス作品は、世界各国を巡回し、観客および評論家より絶賛を浴びています。梅田氏の作品は、強力なデジタル表現を備えた高度にホリスティック(全体的)な芸術的手法で知られており、ダンスにみられる身体的要素のみならず、視覚的、音響的、感覚的、そして何より重要といえる時空間的な構成要素を取り入れています。梅田宏明氏は、デジタルプロジェクションとダンスが織りなすパフォーマンス作品『while going to a condition』と『”Intensional Particle』のなかで、頭で理解するというよりむしろ体感するパフォーマンスへと観客を引き込む磁力を生み出しました。舞台上の見事な照明アーキテクチャ、振付、そしてアーティスト自らのダンスにより、壮観なデジタルグラフィック映像を通じて、生命体のごとく動く人間の身体と融合し、「不安定な安定」に溢れかえったデジタルリアリティが繰り広げられました。

本フェスティバルは、その後も引き続き、多彩な日本の芸術が観客を感動に包み込みました。山本幸奈氏は、フィンランド人ダンサーのトゥーリ・マーラ氏とともに、書道の伝統に現代的なダンスパフォーマンスが寄り添う作品『Ibuki – Breath of Life』への体験へと観客をいざないました。「息吹」という日本語は、春の季節と巡りゆく生命を表しています。「息吹」を通じて、可能性が広がり、新たな始まりを告げます。ひとつひとつの呼吸が新たな始まりなのです。山本幸奈氏とトゥーリ・マーラ氏は、日本の書道とダンスを通して「息吹」の本質を探求し、身体と書筆を駆使して、巡りゆく生命と呼吸を体現しました。

フェスティバル最終日は、伝統と現代の踊りと太鼓音楽のパワーが一体となったクロージングコンサートで締めくくられました。観客は、著名アーティスト音羽釉菫氏と音羽煌歩氏による、伝統舞踊を通じて描かれた物語を体験する機会を得ました。そのパフォーマンスの後、見事な太鼓音楽と現代的なダンスが織りなす長谷川暢氏によるショーが続きました。両パフォーマンスともに、終演後、スタンディングオベーションが長い間続きました。

Yusumire Otowa and Koho Otowa Traditional Japanese Dance Performance © Arvydas Kumpis

会期中は、さまざまな年齢層や趣向に特化したワークショップで満載となりました。来場者は、茶園清水屋十代目の当主を務める清水太嗣氏が実施した日本の茶道文化のイベントにとりわけ高い関心を示していました。茶園清水屋では、京都府宇治で300年以上にわたり、最高級の抹茶として製茶される碾茶(てんちゃ)の栽培および製造を行っています。また来場者は、茶道家の宮脇史歩氏とともに茶道を体験し、フラワーアーティストKAORUKO氏が繰り広げるフラワーショーを鑑賞するチャンスに恵まれました。

日本文化を専門するリトアニア最大のフェスティバル「日本文化週間inカウナスWA」では、パートナー団体との強力なネットワークとともに、コンサートやパフォーマンス、講演、ワークショップ、展覧会、その他多数の催しをお届けし、人々に日本への理解と愛情をよりいっそう深めていただくきっかけづくりに取り組んでいます。