コラム
Column海の幸を探究しながら文化と食を共有
本イベントの主催者は、このプロジェクトが、日本人シェフとノルウェーの食品業界の代表者や学生らに、ノルウェーと日本の食文化に関する情報を共有し互いに教授し合う機会を提供し、両国文化の類似点や共通点への私達の理解を深めたことから、絶大な成功を収めたと感じています。
今回のプロジェクトの構想は、EU・ジャパンフェスト日本委員会に前回ご助成いただいた「北極とアジアの食の繋がり:食文化をめぐる障害の打破」と題したプロジェクトの後続企画として実施されたもので、前回のプロジェクトでは、ノルウェーの水産物に対する日本のシェフならびに消費者の高い関心が存在することが明らかになりました。その際、私達は、ノルウェーから日本に食材を輸送し、ノルウェー産の水産物を駆使した興味深くかつ革新的な日本の調理法を紹介するという、刺激に富んだオンラインセッションを収録しました。今回の最新プロジェクトでは、日本人シェフをノルウェーにお招きし、ノルウェー北部沿岸の美しさと素材の恵みを体験してもらい、ノルウェー産水産物の調理法や楽しみ方に関する自らの知識や技法を若者と共有していただきました。この後続プロジェクトは、私達の取り組みを補完し、さらに芸術的創作力にスポットを当て、芸術的共有体験を創出し、青少年を育成し、両国で実施されるプロジェクトを通じたノルウェーと日本の関係を強化するという循環型アプローチを例証するものと私達は考えています。私達の協力者は、ワークショップとポップアップディナーの両イベントで、芸術的技能と創作力を披露し、学生や他の参加者に、日本とノルウェーの水産物の真価を目の当たりにするきっかけをもたらしたのです。
多くの参加者は、今回初めて海藻養殖場を訪問し、野生の海藻を採取したのも初めてで、また日本人シェフから日本文化についても学びました。このアプローチは、実践型の実験的活動と、教育的プレゼンテーションと料理セッションを組み合わせ、日本の文化やノルウェーの水産物、そして私達が共有する食文化に関する能動的な学びを参加者に促しました。ワークショップ・イベント終了後、参加者は、今回の教育的・実践的活動への反応を把握するための一連の質問を受け、この略式アンケートの回答から、参加者がこれらの活動に満足しているとの示唆が得られました。参加者の55%が「期待以上だった」、一方残りの45%が「期待を満たしていた」とコメントしました。二つの別々の質問で、「日本食について知識を得たか?」と「日本文化について知識を得たか?」と尋ねられ、75%が「そう思う」、25%が「多分そう思う」と回答しました。「日本料理とノルウェーの料理の類似点について学んだか?」という質問には、33.3%が「確かにそう思う」、53.3%が「おそらくそう思う」、10.4%が「どちらともいえない」との回答がありました。「海藻の養殖について知識を得たか?」という質問には、90%が「そう思う」、10%が「多分そう思う」と回答しました。「海藻を使った調理について知識を得たか?」と訊かれ、100%が「そう思う」と答えました。「日本に訪れることに興味があるか?」と尋ねられ、「確かにそう思う」が43.3%、「多分そう思う」が33.3%、「どちらともいえない」が23.4%と回答しました。最後に、全体的な感想は非常に肯定的で、ある回答者から、このような記述がありました。「海藻養殖場を訪問して実際の養殖を視察し、その産物や養殖所の背景にある研究についてより深く学ぶことができ、興味深かった。私は以前、海藻をあまり食べたことがなかったので、フィスケボーセン(ノルウェーの食材のみを使用し、海岸、海、地元の食の伝統に特化した持続可能な食のワークショップ)を訪れ、熟練の日本人シェフが海藻を使ってコース料理を創り上げる傍らで、学生や観客にもコース料理の準備に参加させてくださり、面白さと総合的な学びの両方が得られる体験となりました。」
このポップアップディナーのイベントでは、追跡アンケートの実施を行いませんでした。しかし参加客からの反響は圧倒的に好意的で、多数の参加客が、それまで知らなかった方法で仕立てられた、数々の斬新で楽しみな食材を体験できたと感想を述べていました。日本の創作力と技法の融合に、ノルウェーの素材が一体となり創り上げられた独自のメニューは、ノルウェー産海老の海老ガラム(海老醤)和え、アミガサタケの海藻とトナカイ肉添え、トマトジュレの海藻グラニテのせ、海藻と野菜のクラッカー、フレッシュチーズと海藻ムール貝スープ、タラバガニの海藻の燻製と日本産アーモンド添え、海藻と白アスパラガスのせ鮑カレー、オヒョウの海藻と湯葉包み、ドライビーツのベリーと海藻添え、いちごと海藻のチョコレートケーキでした。
さらに日本人シェフ達は、ノルウェー沿岸のこの場所が、こうしたイベントに理想的であると気づき、ディナー当日に、海で野生の海藻の収穫もしてくださいました!本プロジェクトの結果として、シェフの皆さんは、感謝の気持ちとインスピレーションについて述べ、協働を経て、お互いに知識やひらめきを得たとのコメントが電子メールで寄せられました。こうした類まれなコラボレーションは、今後、アーティスト、シェフ、学生、生産者各自の取り組みに、確実にプラスの影響をもたらすことでしょう。
本プロジェクトは、ソーシャルメディア(@arktiskmat @popupnorge)を介して発信され、今回のプロジェクトからの報告は、欧州文化首都ボードー2024のFeeding Europeプログラムの報告書にも掲載されることになっており、本プロジェクトの構想をさらに発展させる可能性のある今後の欧州文化首都プロジェクトなど、様々なステークホルダーにも配布される予定です。また日本人招待シェフは、本プロジェクト全体に対する高い満足度と、ノルウェーの学生や業界のステークホルダー向けの、日本の文化、海藻、そして水産物調理の応用法の教授に関するフォローアップ活動の妥当性を表明しました。本プロジェクトは、食が文化とアイデンティに不可欠であり、このことから、食が知識の共有や文化交流のための理想的な媒体をもたらし得ることを明確に示しました。私達は、本プロジェクトで発展した関係を引き続き強化することを楽しみにしつつ、日本とノルウェーの本プロジェクトのパートナーやアーティストのあいだで、これに続く交流が行われるよう期待しています。