コラム
Column[#KeepgoingTOGETHERプログラム第3弾] 『未開の議場 -オンライン版-』
オンライン配信で得た成果と課題
成果として、「演劇的」なことは画⾯上で成⽴しうるという実感を得た。
「開場時間」からはじまり、コメント欄でのお客さん同⼠の意思疎通や、リアルタイムで投稿するTwitter、そして実況のように使えるハッシュタグなど、「同時に空間を共有する」演劇の楽しさを感じてもらえたと思う。「⾒る⼈と演じる⼈がひとりずついることが演劇の最⼩単位だ」と、この芝居を作るにあたって演出の北川が⾔っていたが、まさにその通りだった。
また、功罪はあろうが、インターネットでの配信では、お客さんがより「⼿軽に」「⾝近に」観劇できる。その「⼿軽」の広さを感じた。⾵呂に⼊りながら、ご飯を⾷べながら、リラックスして⾃分の好きな体勢で観劇できるという特徴は予想できたものだが、そのほかにも県外、海外の遠く離れた地にも届けられることや、⼦育て中の⺟親が少し⾒逃したシーンを巻き戻し、後追いで視聴できる嬉しさをコメントしてくれていた。ポータブルプレーヤが普及して爆発的成⻑を遂げた⾳楽業界のように、演劇のポータブル化はより演劇を⾝近なものにするはずだと感じた。
オンライン配信準備で苦労した点・⼯夫した点
最初に、Zoom というツールを使⽤するまでの調査がまず必要でした。無料プランと有料プランの機能の違いや、追加機能でなにが可能になるのか、それにより配信形態やカンパの⽅法も変動するので、最初は雲をつかむような気持ちがしました。
次に、それぞれの参加者がそれぞれZoom に慣れる必要がありました。俳優だけでなく演出家も、はじめて劇場で建てられた美術をみたときのように、ツールを最⼤に⽣かし、遊び、演劇にしていくために、試⾏錯誤を繰り返しました。
実務⾯では、Zoom とYouTube Live の接続がとても容易にできたため、配信に対しての苦労は少なく、それを含めた「⾃分がZoom 演劇をつくる道のり」を本番前よりブログで公開しました。
演出⾯では、「握⼿」のシーンでは握⼿する2⼈以外が消えていったり、「投票」のシーンでは挙⼿ではなく画⾯に⾊つきのものを表⽰させて⾊分けをするなど、視覚効果を際⽴たせる演出を⾏い、会議のリアリティを損なわないレベルでのデフォルメを施しました。また、「出ハケ」のシーンがYouTube Live にどのように反映されるかなどのトライをしました。さらに俳優ひとりひとりも、シーンのフォーカスを揃えるため、⾃分がどうカメラに映っているかを意識して、短い稽古のなか⾃分の映り⽅を研究しました。
今後の活動におけるオンライン配信の活⽤や展開について
⼿始めに、「未開の議場」オンライン英語字幕版の制作に取り掛かっています。現在字幕チームを作成し、再来週に公開できるよう調整中です。さらに「会議劇」というジャンルとZoom という媒体の相性の良さを⽣かし、違う作品も制作できないかと検討しています。
また、YouTube チャンネル収益化の条件のひとつ「過去12 ヶ⽉での総視聴時間4000 時間超え」を突破することが困難な道のりではないと感じています。世界中でそうだと思いますが、⽇本の芸術関係者、演劇関係者は⼤変な⾦銭的困難に陥っており、この事態はしばらく改善されないことが予想されます。このチャンネルを元にして、企業などに属していないフリーのアーティストの収益化への道を探っていきたいと考えています。
*本レポートは2020年4月22日に執筆され、その後5月1~2日には英語字幕版の上演配信が行われました。
<配信プログラム>
『未開の議場 -オンライン版-』
- 実施日:
2020年4 ⽉14 ⽇(⽕)17:05-17:55(公開稽古)
4 ⽉16 ⽇(⽊)18:05-18:55(公開稽古)
4 ⽉17 ⽇(⾦)20:00-(公開ゲネプロ)
4 ⽉18 ⽇(⼟)20:00-
4 ⽉19 ⽇(⽇)20:00- - 内容:とある街のとある商店街が主催する祭の実⾏委員会は、いま流⾏っている病気のため、オンラインで会議を⾏うことになった。進⾏を確認するための和気藹々とした会議となるはずが、不測の事態の発⽣によって思わぬ⽅向へすすんでいく。きたるべき移⺠時代・外国⼈労働⼒の受け⼊れが現実味を帯びる昨今に、⽇本の抱える外国⼈との問題を描き出す⼆時間⼀幕の会議劇。
- 告知方法、使用した広報ツール:Twitter
- 使用した配信ツール:Zoom、YouTube Live
- 視聴者の反応を得るために工夫した点:
・ハッシュタグの使⽤(#未開オンライン)
・公開稽古、公開ゲネプロを⾏うことによって、事前周知を進めた
・稽古〜本番まで⾃由にコメント可能、またハッシュタグを実況中継のように使ってもらうことで、本番を同時に体験している臨場感を感じてもらった。
・「開場時間」「前説」「カーテンコール」「後説」など実際の演劇の流れを踏襲し、「映像配信」ではなく「演劇の配信」であることを⽰した
・企画から本番へのスピード感を重視し、その過程を公開した。 - 視聴者数:5574 回(4/20 15:00 時点)