深い感銘と永遠の友情

コスタス・ゲオルガコプロス|アヴァン・アート財団 理事長

アヴァン・アートフェスティバルの舞台で、私達が日本のアート作品およびアーティストを披露するプロジェクトを展開するのは、今回で4回目となります。

私にとって、これは深い愛情と永続的な関係といえます。私は過去に何度か日本を訪問しており、ごく最近ではミッション「Music Export Poland」の一環で、財団として両国でプロジェクトやイベントを行っていますが、はるかに優先的に取り組んでいるのが、ポーランドで独自に開催しているフェスティバルで、今年はポーランド国外初となったベルリンでの開催も果たしました。

Kukangendai Berlin ©︎ Kazimierz Ździebło

すべては、EU・ジャパンフェスト日本委員会の古木氏と箱田氏から招聘を受け、日本に滞在した10年前に始まりました。2016年に同団体からご助成をいただいたおかげで、私達は、欧州文化首都ヴロツワフ2016の一環として、この回のフェスティバルのすべてを日本のアートに捧げた、アヴァン・アートフェスティバル2016ジャパンという非常に大規模なプロジェクトを実現することができたのです。

今年は、新たな開催に加え、この度ベルリンでの初開催を実現いたしました。招待アーティストのうちの数名は、すでに私達の良い友人達で、その例として2016年のアヴァン・アートフェスティバル(以下AAF)でGroup Aというユニットで出演したTommi Tokyo(トミー・トーキョー)氏や、私達がこよなく愛し、良く知る間柄の空間現代が挙げられます。空間現代に関しては、2019年に京都の彼らのスタジオで、フーベルト・コストキエヴィッチ氏のアーティストインレジデンスを実施し、その締めくくりに合同コンサートを実現した経緯があります。

その一年後、私達は、こちらもやはりEU・ジャパンフェスト日本委員会よりいただいたご助成のおかげで、空間現代が、私達からの招聘を受けてアヴァン・アートフェスティバルとクラクフのアンサウンド・フェスティバルの一環で二回のコンサートを行い、三年後にはAAFに再出演し、さらに今回ベルリンで公演を披露しました。お分かりのとおり、これは私達が育んできた永続的な友好関係の美しい物語といえるのです。

またその逆のパターンもあります。一年前、日本人名プロデューサーのシゲル・イシハラ(DJスコッチエッグ)氏が、ベルリンでの私達主催のフェスティバルに出演し、今年は同氏をポーランドでの二回のコンサートにお招きしました。これは、彼とのコラボレーションが、決して今回で最後とならないことを物語っています。

これまでに得た経験や築いた関係を踏まえ、私達は、2024年秋にベルリンを舞台に、日本のアートを紹介する大規模なイベントの開催を計画しており、もちろんTommi Tokyo氏やシゲル・イシハラ氏といった前述のアーティストらも出演の予定です。

アヴァン・アートフェスティバルのようなアートフェスティバルは、日本のアートの多様性と豊かさを国際的に披露する素晴らしいプラットフォームを提供します。日本人アーティスト達は、創造性のみならず、伝統や歴史、現代性に対する深い理解をももたらすことから、彼らは重要なフェスティバル参加者といえます。シゲル・イシハラ氏がそうしたアーティストの好例といえるでしょう。

日本人アーティストにまつわる興味深い出来事や逸話を挙げてみたいと思います。2023年度も同様に、出演する日本人アーティストの全員が極めて興味深く個性的な人物であることが大切でした。

音楽やアートに向けた型破りなアプローチと、かなり奇抜なステージパフォーマンスで知られるDJスコッチエッグことシゲル・イシハラ氏については、とりわけ数々の興味深いエピソードがあります。同アーティストは、ゲームボーイのゲーム機を駆使した音楽づくりで有名です。ポーランドのヴロツワフで行われたコンサートでは、ゲーム機のバッテリーが急激に切れ始め、彼は演奏を中止する代わりに、ゲームボーイの音色と電子ビートを織り交ぜ、即興でライブ音楽を創り上げました。彼の演奏は、凄まじいスピードとエネルギーで知られています。彼のコンサートでは、観客が短時間ですら持続不可能と思えるような踊りを見せることがよくあります。それはまさに音とエネルギーのジェットコースターそのもので、ヴロツワフやワルシャワでも同様でした。シゲル・イシハラ氏は、常に忘れがたいライブ体験をもたらすアーティストで、独自の斬新な音楽づくりで定評があります。彼のパフォーマンスは、壮大な創造性を待ち望むファンを魅了しています。

Poil Ueda ©︎ Helena Majewska

フランスのプログレッシブロックバンドPoiLと、薩摩琵琶奏者で歌手の上田純子氏によるコンサートは、私にとって素晴らしい体験となりました。

私は、このプロジェクトがコンサートの場で生でどのように聴こえるのか、そして日本の伝統とヨーロッパの現代的な音色が織りなすこの独特なフュージョンが、ワルシャワの観客からの好評を得られるのか大変興味がありました。事実、これは非常に大胆な試みといえ、PoiLのこの上なくエネルギッシュな音楽が、上田氏が歌う日本の民話の土台をもたらしました。アルバム「PoiL Ueda」は、現代的なヨーロッパ音楽と伝統的な日本の要素の融合を模索し、観る者をくぎ付けにし魅了するパフォーマンスを生み出しました。美と混沌のフュージョンであり、音楽的領域を横断するインスピレーションに満ちた異文化コラボレーションであるPoiL Uedaは、ワルシャワで見事な演奏を披露し、観客から熱烈な反響をいただきました。素晴らしかったです!