誰もが楽しむことができるいけばな

ミロスラヴァ・イヴァノヴァ/萠泉|ミラクル・ワークス/ミラクル・いけばな3級講師、草月流ソフィア研究会代表

いけばなのパフォーマンスをすることは、私の夢でした。なぜなら、いけばなのデモンストレーションでは、観客はただそれを見ているだけですが、いけばなのパフォーマンスでは実際に参加して大きないけばなのインスタレーションを創り上げることができるからです。参加者は自分たちが作品に貢献したことで喜びを感じ、刺激を受けることができるのです。完成された作品は非常に美しいだけでなく、お互いの創造性と分かち合う心を感じさせてくれるのです。昨年、私が初めてブルガリアでいけばなのパフォーマンスを行ったのは、ソフィアの現代アートスペースでした。この時、ブルガリアの元国王シメオン2世の奥様であるマルガリータ元王妃が来てくださり、「この作品に参加できたことがとても嬉しいです」と話してくださいました。元王妃は日本にお住まいになっていたことがあり、その時いけばなのお稽古をされていたそうです。わたしは、そのことにとても感銘を受けました。ソフィアでのパフォーマンスには40人ほどが参加しましたが、みんなその経験をとても気に入り、とても喜んでくれました。あまりにポジティブなエネルギーと興奮に包まれたので、私はもう一度、もう一度、もう一度と、いけばなのパフォーマンスを続けることを決意したのでした。

私は、この人々を力づける体験となるいけばなのパフォーマンスの次の会場を、プロヴディフにしたいと思いました。ブルガリアでソフィアに次いで2番目に大きな都市であるプロヴディフは、歴史と芸術的な雰囲気に満ちた美しい古都であり、かつての欧州文化首都でもあります。

だからこそ私は、2024年に向けてプロヴディフでのいけばなパフォーマンスと展覧会プロジェクトをデザインすることを決意したのでした。

私は2年前、柔らかな花と硬い石というプロジェクトをプロヴディフのローマ劇場跡の東側観客席遺跡の場所で行いました。このプロジェクトでは、現在のプロヴディフの前身である、かつてフィリッポポリスと呼ばれた都市の石造りの古代遺跡の中で、備前焼の器と組み合わせた美しいいけばなを展示しました。古代の劇場の座席として使われていた大きな石や、レンガの壁、金属製の階段や歩道といった荒々しい外観が背景となって、花の優しい美しさをとても際立たせていました。それが、今年もいけばなのパフォーマンスと展覧会のプロジェクトにこの会場を選んだ理由でした。

Ikebana workshop © Kamen Grancharov

今回の展覧会では、昨年から制作を始めた草月流いけばなのスタイルで描いた絵画とレリーフをいくつか展示しました。それらは、荒々しいレンガの壁に映え、輝きを放っていました。また、生徒たちの協力を得て、草月流いけばなの特徴のひとつでもある、絵画と調和し絵画を引き立てるいけばなも制作し、さらに、椰子の葉や丸太、竹を使った大きないけばなも制作しました。これらの作品によって、私たちはいけばなのあらゆる側面を、最も調和のとれた形で表現できたと思います。

そして、この展覧会イベントのオープニングで、私たちはいけばなパフォーマンスを行ったのです。

多くの人々が参加し、中には子供を連れてきた人もいました。子供たちがパフォーマンスに参加するというのは、私にとっては初めてのことでした。以前にも子供向けのいけばなワークショップを実施したことはありましたが、子供たちの中から発せられる、のびのびとした創造性やいけばなを楽しむ姿にはいつも驚かされます。

参加者からは、「この花の名前は何ですか」、「なぜこの花をあそこではなくここに置く必要があるのですか」といった質問がたくさん投げかけられました。そして、すべての参加者が、枝が絡み合った4つの木製のボールで構成されたインスタレーションの制作に貢献し、そのパフォーマンスの過程を楽しんだのです。特に、最も情熱的だったのは子供たちで、何度も何度もインスタレーションに花を挿したがり、その純粋な喜びを表現していました。

今回もまた、前回のソフィアと同様、いけばなのパフォーマンスに参加した人々の喜びを目の当たりにしました。そして彼らの感想は、私を喜びで満たしてくれたのです。

Ikebana performance © Kamen Grancharov

10月27日の日曜日には、展覧会の隣のホールでいけばなのワークショップを行いました。この芸術的な雰囲気の中で初めてのいけばなを体験することは、参加者にとって本当に刺激的だったようです。パフォーマンスに参加した子供たちも何人かワークショップに来てくれ、私たちは美しい盛花をいくつか作りました。そして私は全員が共有したポジティブな感情に圧倒されました。
自然からインスピレーションを得て、持続可能なアートを創作する機会を得たことは、私にとってはこの上ない喜びであり、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

このプロジェクトの実現を可能にしてくださったEU・ジャパンフェスト日本委員会に感謝申し上げます。また、多大なるご協力をくださったプロヴディフ市立古代研究所の皆様、いつも私に寄り添いご指導くださる州村衛香先生、プロヴディフとソフィアの私の熱心ないけばなの生徒たちにも心から感謝申し上げます。

私はこのアートの創作を続け、ソフィアをはじめとして、ブルガリアの他の都市でもさらに発表し続けていきたいと思っています。

プロヴディフの生徒数の増加と彼らのいけばなへの情熱は、この素晴らしいアートの美しさを、七つの丘の街とも呼ばれるプロヴディフにパフォーマンスやワークショップを通して紹介し続けることを、そしてブルガリア全土にいけばなを広めていくことを、私に強く促していると感じています。