コラム
Columnいけばなと絵画-華麗なる融合
私はいつも絵を描くことに情熱を感じてきました。芸術的な家庭で育ちました。アニメーション映画を制作していた伯母もいます。子供の頃、私は絵を描き、展覧会を開くほどでした。その後、私の人生は絵画から遠ざかっていきました。12年前にいけばなの世界に踏み出したとき、絵画への情熱が次第に戻ってきました。そしていけばなへの情熱と絵画への情熱の融合を決意するときが訪れたのです。私は、いけばなの哲学と表現手法から着想を得た絵画とレリーフで成る「壁のいけばな」を創作するに至りました。私はこれを、私の芸術的試みのさらなる発展形として捉えています。
植物素材とチョークペイントとワイヤーを用いて、大小数々の絵画を制作し、それぞれの作品が自分自身の経験やインスピレーションを反映しています。
2018年、私は視察旅行で日本を訪れました(EU・ジャパンフェスト日本委員会に感謝いたします)。東京の草月流本部の指導者向け講習会に出席し、それまで見たことのなかった石化柳という美しい植物に取り組む機会をいただきました。講習会終了後、私はその枝を持って日本じゅうを巡り、そしてはるかブルガリアに持ち帰りました。そしてこれらの枝は、『Dragon babies』と題した絵画のなかで生まれ変わったのです。
絵画のなかには、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』からインスピレーションを受けて創作した、極楽鳥花の葉で表現した海の波の作品があります。
数年前にバルセロナに行った際、アリゾナ州ペイジのアンテロープキャニオンという場所を捉えた美しい写真の展覧会を鑑賞しました。その後、この極めて美しい場所を訪れました。そこで目にした息をのむような絶景が、芸術作品のなかでそれを再現するよう私を奮い立たせました。
プロヴディフ市アート・ギャラリーで開催された「壁のいけばな」展では、来場者に、海辺の夕日や、ふぐ、海の波、オレンジ色の珊瑚、銀のネックレス、天の川、沖縄のジャングル、始まりや終わりなどを題材とした作品をご覧いただきました。
このほか、竹やドライフラワーや葉を用いて、昇月や星降る夜空、竜巻、来たるクリスマスと正月休暇にちなんだ花火などを表現したインスタレーション作品をお楽しみいただきました。
会場の一室には、私の生徒クレメラさんとリディアさんの助けを借りて制作した彩色したヤシの葉と、異なる大きさの枝の球体が織りなす大型インスタレーション作品が配され、また私達は、複数の絵画と調和したいけばな作品を創作しました。
会場全体が完全に整い、いけばながもたらす美が新たなかたちで姿を現したのです。
12月8日の展覧会のオープニングでは、来場者のひとりが哲学の教授であることが分かりました。彼女は本展の美しさと調和に大変驚き、絵画と独創的アプローチに感嘆したと語っていました。プロヴディフを拠点とする著名アーティストの姿もあり、披露された斬新な芸術に驚きを覚え、私を革新者と称しました。
私にとって驚きだったのは、これらの絵画が、作品のなかで見たものを自分なりに解釈し、自らの記憶や感情を引き出し、それを共有するよう来場者を刺激したことでした。最も多くの解釈があった作品がオレンジ色の珊瑚の絵画で、誰もが頭のなかで作品から異なるイメージを連想していたようでした。
そして感想ノートに書かれたコメントが、私の心を喜びで満たしました。ジャスミナさんという14歳の女の子が残してくれたコメントを読み、私はとても幸せな気持ちになりました。
「あなたのアートの美しさを言い表すことはできないけれど、芸術は目と心で鑑賞するものだと私は思います。ああ、あなたのアートが本当に好きです、このアーティストは天才です!とても独特で型破りで、あなたに憧れます!そして14歳の私は、インスピレーションを受けました。もっと沢山の芸術作品を創ってください。あなたでいてくれて、ありがとうございます!」
ある来場者とそのお嬢さんが書き残してくださった、こちらのコメントも引用いたします。これは、私が考えていたことを絶妙に表現しています。
「極めて独創的で刺激的な作品で、豊かな空想に満ち溢れていました!私と10歳の娘は感動しました。私達は作家とお会いする機会にも恵まれ、彼女の独自の世界観を紹介してくださいました。ありがとうございました!」
12月17日日曜日、私は、展覧会で一番大きな展示室でいけばなワークショップを実施しました。この芸術的な雰囲気に包まれながら初めてのいけばなをいけることは、来場者にとって実に刺激的なことでした。私達は、美しい盛花という花型をいけました。彼らは、絵画に囲まれた展示台に置かれた各自のいけばな作品を写真に収めることができました。私は、私達皆がともに感じたポジティブな気持ちに圧倒されました。
感想ノートに、参加者のひとりがこのように述べていました。「最高に素晴らしいクリスマスプレゼントとなりました。これは私自身への贈り物です!この機会と経験に、心の底から感謝します!素晴らしい休暇をお過ごしください!」
これは私にとって本当に光栄なことで、自然からインスピレーションを得たこの持続可能な芸術を創作する機会に恵まれたことを、非常にありがたく感じています。
本プロジェクトを実現可能にしてくださったEU・ジャパンフェスト日本委員会に感謝の意を申し上げます。そして多大なご支援をくださったプロヴディフ市アート・ギャラリーと、ビデオをお送りくださり、いつも私に寄り添ってくださる州村衛香先生、プロヴディフとソフィアの私の熱心ないけばなの生徒達にも感謝いたします。
私は、この芸術を創り、ソフィアをはじめブルガリアの他の都市で発表し続けていく意向です。
増加するプロヴディフの私の生徒達と彼らのいけばなへの献身ぶりが、「七つの丘の街」の異名でも知られるプロヴディフを舞台に、展覧会、パフォーマンス、ワークショップなどを通じてこの素晴らしい芸術の美を披露し、いけばなをブルガリア全土に広め続けるよう私を駆り立てているのです。