コラム
Columnインスピレーションの原点への回帰
コンセプチュアルファッション展および映画「+ 7 HOURS」が文化服装学院にて披露される・・・
これはまさしく夢の実現といえました。コンセプチュアルファッション展が、世界の反対側のブルガリアから日本に帰ってきたのです!パンデミック禍の長年におよぶ隔離と孤立を経て、「+ 7 HOURS」は、遂にそのインスピレーションの原点である日本へと戻り、象徴的存在の文化服装学院創設100周年記念の年に披露を果たしました!
日本とブルガリアのファッションデザイナー、学生、アーティストによる真のコラボレーションは実際、2019年1月に女優イルメナ・チチコヴァ氏、ファッション映画監督アレクサンドル・ゲルギノフ氏、美術監督モムチル・タセフ氏と、ブルガリア・ソフィアのコンセプチュアルデザイナープラットフォームIVAN ASEN 22の芸術監督およびキュレーターの私が、日本文化からインスピレーションを探りつつ、我々独自の観点を融合させ、未来のファッション映画のシークエンス映像を東京の主要ロケーションで撮影するという構想を掲げて訪日した際に東京で誕生したものでした。
私達は、伝統と歴史のみならず、現代的な精神や都市生活に特徴づけられた要素を選びました。日本の共同制作者となるアーティスト小林綾子氏とロイ水野氏、作曲家上本巨志氏と出会い、文化服装学院でミーティングを行い、そこで私達は、学生達に本プロジェクトに参画してもらい、各自が独自のひらめきやブルガリア文化の現象から着想を得た個性的なデザインを考案できないかと服装科の教授らに提案しました。各デザイナーの作品の最初の出発点は、持ち主の物語が秘められた本場日本の着物の写真でした。
その成果となった展覧会は、欧州文化首都プロヴディフ2019の公式プログラムの主要文化イベントのひとつとして開催されました。パンデミック渦の時期ではありましたが、本映画作品は、数々の映画祭に選出および上映され、多数の絶賛を獲得しました。プロジェクト全体としては、スロヴェニア・リュブリャナのBIGインスティチュート東南ヨーロッパ・クリエイティブエコノミーセンターより、2020年Big Seeファッション・コラボレーション・アワードを受賞しました。
こうしてパンデミックによる規制の解除後の2023年1月に、私と女優イルメナ・チチコヴァ氏は、日本側のパートナーとの対話の再開と、文化服装学院で本プロジェクトを発表する企画の実現を目指し、遂に再び日本への視察旅行に飛び立つことができました。
文化学園ファッションリソースセンターの上田多実子氏との実り多いミーティングのなかで、私達は同学の展示会場で「+ 7 HOURS」展およびファッション映画を発表する可能性を検討し、2023年に本展開催の候補日を見つけることで合意しました。文化学園とのコミュニケーション全般において、私達に代わって翻訳、調整、計画立案の面でご助力くださった、我らが日本側のパートナーであり友人でもある小林綾子氏からの絶大なご支援をありがたく感じました。
ブルガリアに帰国した私達は、文化学園より文化学園ファッションリソースセンターの素晴らしい展示会場をご提供いただけるという朗報を受け、文化学園が創立100周年記念の年である2023年5月に本展を披露することを可能にしてくださったことを、極めて光栄に感じました。
準備段階のあいだ、私達はデザイナー衣装の選定と広報用の資料の用意に取り組み、日本側のパートナーである小林氏と上田氏と絶え間ないやりとりを重ねました。5月に日本に渡航する少し前には、もう一人の素晴らしい日本人協力者である谷口真由美氏から、同氏が率いるボランティア団体に所属する日本人米内悠氏が、文化学園での展示設営に参加し、私達の展覧会の設営風景を記録するカメラマンを務めてくださるという良い知らせが舞い込んできました!
5月10日の日本到着直後、私達は、悠氏、綾子氏、上田氏と彼女のアシスタントの皆さんの献身的なご支援のもと、文化服装学院で本展の設営を行いました。マネキンに着せられたデザイナー衣装が並べられ、会場の特設コーナーの壁にファッション映画を投影する準備が整いました。
2023年5月11日に開かれた「+ 7 HOURS」× BUNKA展の公式オープニングには、文化学園大学の学長、ファッションリソースセンターのセンター長、教員、学生、ブルガリア人コミュニティからの来賓が出席しました。私達は、日本人共同制作デザイナーのひとりである尾久樹氏とお会いでき、彼がブルガリア人のデザイナー仲間達と親交を深めたことを、この上なく嬉しく思いました。尾久氏は、文化服装学院の卒業生で、現在は新卒で有名な国際的ファッションブランドに入社し勤務しています。5月17日までの会期中、本展には、文化学園大学、文化服装学院、文化ファッション大学院大学、留学生、教職員、学外の観客など、200人もの来場がありました。
観客からは熱烈な反響をいただき、日本とブルガリアの相違点に加え、双方の文化の結びつきについての議論を促しました。
デザイナーのシメオン・アタナソフ氏制作による靴作品を文化学園に寄贈し、それが同大学のアーカイブに収蔵されたことは、IVAN ASEN 22にとって光栄なことでした。
今後の計画には、文化学園との芸術的および教育的のレベルでの次なるコラボレーションに加え、私達にインスピレーションを与え続け、こうした素晴らしい相互理解を可能にしてくれる日本文化への私達の理解を深める取り組みが盛り込まれています。日本という、その神秘と魔法と伝統の現代化によって私達の生活を豊かにしてやまない国を再訪し、ある意味まるで我が家に帰って来たような気持ちになりました!