記念すべき年

ストラヒンジャ・バビッチ|DUKフェスティバル ディレクター

セルビアのチャチャックの活気溢れる中心街で、人々から愛される我らがDUKフェスティバルは、第10回目の開催を実施し、歓喜に満ちた節目を迎えました。DUKフェスティバルのプロジェクトは、10年間続くストリートアートイベントです。本プロジェクトでは、壁画を描くことで、都市の外観を刷新し、公共空間に平和をもたらし、ヘイトスピーチと闘うことを目標としています。DUKフェスティバルは、長年にわたり、120点を超える壁画制作、6つの音楽フェスティバル、多数の展覧会、スケートボード競技会、その他の文化イベントを開催し、当地域で都市文化を牽引する組織として成長するとともに、バルカン諸国における主要なストリートアートフェスティバルのひとつに数えられています。

私達は今年、2度目の日本人アーティスト招聘という特別な栄誉に恵まれ、これはEU・ジャパンフェスト日本委員会からのご支援を通じて実現しました。このコラボレーションは、単に自分達の街を新たな壁画で装飾するだけでなく、私達の文化的景観を豊かにし、大陸を跨いだ持続的な繋がりを築きました。

私達は、当初から、SUIKO氏をお迎えするという展望に、期待と興奮に胸を膨らませていました。彼の独自の芸術的観点や文化的影響が、私達のフェスティバルに新鮮な局面をもたらすことが望めたからです。主催者として私達は、芸術的境界を超え、相互理解を育む交流を推進していこうと意欲的でした。

A mural by SUIKO © DUK Festival

SUIKO氏の専門的なご指導のもと、緻密に施されたスプレーテクニックにより、伝統的な日本のモチーフと現代の芸術的要素がシームレスに融合し、壁画に命が吹き込まれました。本プロジェクトは、入念な計画と、コミュニティの活発な参画、さらに高い芸術的水準を達成することへの揺るぎないコミットメントが相俟って展開しました。SUIKO氏の綿密なアプローチは、あらゆる細部に著しく表れており、さまざまな計測道具、箔、テープ、その他の技法を駆使し、作品づくりにおいて比類のない精巧性と魅惑的な複雑性を実現しました。その成果は、文化遺産と現代アートの革新性の両方を見事に物語るものであり、その精巧性と芸術性の調和的融合が、観る者を魅了しました。

フェスティバル会期中に展開した活動は、あらゆる面で私達の期待を上回りました。SUIKO氏や昨年のBAKIBAKI氏のような日本人アーティストと緊密なコラボレーションを行えたことは、驚くべき経験となりました。企画、絵画制作、文化交流の場で共有したひとときを通じて、私達は自分達の芸術的アプローチと文化的伝統における顕著な類似性と素晴らしい相違点の両面を発見しました。これらの交流は、私達の日本のアートへの理解を深めただけでなく、私達の視野を広げ、世界の芸術的動向や技法についての新たな見識を与えてくれたのです。

今回のコラボレーションの成果は、まさしく変革的といえました。今や街路を美しく飾る見事な真新しい壁画により、チャチャックの都市景観が若返り、それぞれの作品が創造性とコラボレーションを物語っています。これらの作品は、言葉の障壁を超越し、コミュニティをひとつにするアートの力の永続的な証としての役割を果たしています。さらに、本フェスティバルそのものへの関心と参加者数が高まりを見せ、近隣および遠方からの芸術愛好家や文化使節を呼び寄せました。

さらに今後について、未来の展望は明るいと感じています。今年のフェスティバルの成功が、継続的な国際的コラボレーションに向けた力強い基礎を築きました。私達は、多様な背景を持つアーティスト達とのさらなる交流を構想し、私達の文化的タペストリーをより彩り豊かにするとともに、芸術的革新と文化的多様性の中心地としてのチャチャックの名声を確立して参ります。私達と日本側のパートナーとのあいだで築いた絆は、絶えることなく、人々を魅了し鼓舞し続ける未来のプロジェクトへと道を切り開いていくことでしょう。

Process of the mural creation © DUK Festival

本フェスティバルのSUIKO氏とのコラボレーションは、目覚ましい成功を収め、この協力関係の継続を後押ししました。私達は、ともに文化遺産と現代美術の交差点を探究し、活気溢れる創造性の祭典の実現に至ったのです。今後私達は、このコラボレーションを拡大し、SUIKO氏の故郷である広島での壁画制作を組み込み、彼の広島の街との深い繋がりと、広島市の芸術的遺産を披露する可能性に心躍らせています。このほか、広島出身の他の才能豊かなアーティスト達を迎え、文化交流を育むとともに、日本各地からの多彩な視点やスタイルを取り入れ、私達のフェスティバルをより充実させていくことを心から楽しみにしています。こうした進行中の対話は、私達のコミュニティをよりいっそう豊かにし、芸術的卓越性と文化交流に向けた私達の取り組みをより深めていくことを約束しているのです。

結論として、第10回DUKフェスティバルのSUIKO氏との経験は、まさに驚異的の一言に尽きます。この経験は、芸術と文化交流に秘められた変革力に対する私達の信念を再確認させるものとなりました。私達は、将来のアーティストと主催者の双方に「多様な視点と関わり合うあらゆる機会を掴んでください」と呼びかけます。なぜならば、そうすることで、自らの芸術的実践を豊かにするだけでなく、より密接に結びついた調和的な国際社会に貢献することに繋がるからです。

自分たちの街を、創造性とコラボレーションの色彩で描き続けていきましょう!