さまざまな景色の中で

鈴木ユキオ|「鈴木ユキオプロジェクト」振付師・ダンサー

“BODY.RADICAL”というビエンナーレに参加できとても嬉しく思います。何度も主催しているバタリタとやり取りをしてきており、ぜひ参加したいと思っていたフェスティヴァルでもありました。

私の師匠である室伏鴻もこのフェスの常連であり、色々と話しも聞いていたので今回どのような参加者がいるのか、どのようなコラボレーションができるのかといく前からとても楽しみにしていました。

行程の中には、室伏鴻のアーカイブ映像も見ることができるプログラムもあり、自分の中で室伏鴻への追悼と感謝の気持ちを持って参加しました。

Joint improvisation in the HOPP Museum Garden in Budapest©︎PINTÉR Gábor

 

初日は、フェレンツ・ホップ東洋美術館の庭園でのパフォーマンスでした。

皆が初めましてでもあり、それぞれのソロを踊りながら、最後に皆でセッションをするというものでした。

アジアの雰囲気のある庭園の雰囲気が素晴らしく、ダンサーが庭のいろんな場所に移動しながら踊るので、お客さんも思い思いの場所で移動しながら見る感じも素敵でした。 私のパフォーマンスは、音楽家のウエルコビッチ・ガル・ギュズーと即興で踊ることにしました。

竹藪もあり、ステージもあり、芝生もありと、その場所からもらうエネルギーに導かれて、心地よく踊ることができ、またたくさんのお客さんもとても温かく見守ってくれていたと思います。そして最後のセッションもそれぞれを知る機会にもなり、その後のツアーを回るための、お互いの自己紹介にもなるよい機会でした。

2日目は、ジョルナイ・クォーターでの公演でした。劇場スタイルで照明も仕込み、それぞれの作品を発表しました。私は45分のソロを踊りました。最後には大学の生徒でノイズ音楽のアーティストの音でセッション。そしてその後にお客さんとのトークでした。

子供が見にきてくれていて、とても興味を持ってくれて色々と質問をしてくれました。このフェスがハンガリーの色々な場所でやることの目的の一つが、多くの方にいろんなダンスを見てもらい、興味を持ってもらい、ダンスを始める人たちを増やしたり刺激したりすることだとバタリタから聞いていたので、こうして少しずつでもたくさんのお客さんに見てもらうことが大切だなと感じました。

3日目は教会の庭です。こちらもそれぞれが好きな場所を見つけ作品を踊り、最後にセッションをしました。お昼にハンガリーの家庭料理をいただきました。これが最高に美味しくてパフォーマンスがあるので食べすぎないようにするのが大変でした。ここでのパフォーマンスもお客さんがたくさん質問してくれて、子供もたくさんきてくれて感想を伝えてくれました。観客と交流したりフィードバックがあるのは、とてもよいなと感じました。特にコンテンポラリーの作品を初めて見る人にとっては、質問したり作者の意図を聞いたりすることができるのは作品を理解するのによい試みだと感じます。

4日目は、なんと湖畔でのパフォーマンスでした。パフォーマンスの前にワークショップをしました。舞踏をベースにそれを発展させて自分のスタイルとしているので、舞踏から学んだことを皆と共有することにしました。パフォーマンスは、湖をバックにソロを踊りました。ロケーションが素晴らしく、この景色の中で踊れることは幸せでした。湖に遊びにきている人達も興味を持って見にきてくれました。

毎日違う場所でのパフォーマンスをすることで、たくさんの方に見てもらうことができ、またトークでいろんな感想を聞くこともでき、交流できたことがとてもよい経験になりました。

Suzuki Yukio’s performance in Balatonboglár ©︎ MÁNYIK István

 

このようなツアーの場合、なかなかお客さんと話をする時間が持てないことが多いのですが、今回のツアーでは、それぞれの場所で様々なお客さんとお話ができ、感想や質問をする時間が持てたことが大きな収穫でした。質問を受けたり、自分の作品を話すことでより作品を理解したり、深く考えることができる機会となりました。そして感想をもらえるのはとても嬉しいものだなと感じました―特に小さい子供が興味を持ってくれたり、これをきっかけにダンスを初めるきっかけになったらよいなと思いました。特に私の場合は、24歳から初めているのでダンスを始めるのに年齢は関係ないと伝えることが身を持って証明できたこともよかったなと思います。やはりダンスは小さい頃から習うものだという考えは今でもありますし、実際もちろん早く始めるのはよいことだと思うのですが、もし自分が始めたければ年齢を重ねていても始めることができるということを伝えれたと思います。

そして参加しているダンサー同士のセッションという試みもお互いを知ることができ、またそれぞれの踊りの背景を、身体を通して知ることができる貴重な機会でした。

今回の参加者は、ハンガリーのダンサーのラウラ。韓国からはヤン・ビョンヒョン。オランダで活動しているヒロとトゥ。そして地元ハンガリーのミュージシャンが即興のパフォーマンスに参加してくれました。

Murata Hiro’s and Hoang Tu’s performance in the Church Garden in Ceglédbercel ©︎Batarita

 

それぞれのソロやデュオを見て、色々と学ぶことも多く、お互いによい影響を与え合えたと思います。そしてお互いの感想を交換して、作品の説明を聞いたりしました。それぞれの国の文化やダンスの状況についてもたくさん話しをし、お互いにこれからどのようにしていきたいかなどダンスについても多くの話しができたこともとてもよい経験でした。

みんな、ぜひ日本でも公演したいということなので、日本のコンペがどのようなものがあるかを伝えたり。いくつか日本のレジデンスの企画なども伝えて作品作りのために滞在することもよいかもしれないと話したりしました。ぜひ実現して日本でも彼らの作品が上演されたら嬉しいです。そしてこの関係が今後も何かの形で繋がっていけたらよいなと感じています

終わってしまうとあっという間でしたがとても濃い身体–“Body Radical”そのものになれた。ハンガリーツアーでした。

鈴木ユキオ