コラム
Column修練と技の上達の積み重ね
世界各地に広まる合気道
合気道は、欧州ならびに世界各地で最も人気のある日本武道のひとつです。ソフィアに始まった合気道は、やがてブルガリア各地の大小の街に広まり、グループが結成され、大人や子供らが稽古に励んでいます。
2017年に実施された第一回セミナーおよび演武会の成功に引き続き、欧州文化首都となったこの年に、プロヴディフの街で武道・合気道を称える第二回セミナーが開催されました。
日本武道としての合気道
合気道を実践する誰しもの心のなかに、道場の発祥地である日本を訪れたいという夢があります。多数の人々が日本を訪問し、合気会本部道場での稽古を叶える一方で、そうした可能性に出合えない人も他に大勢いることから、熟練の師範を各国に呼び寄せ、指導を行っていただき、合気道の文化と実践の活性化を図ることが極めて重要といえます。
世界の合気道本部である公益財団法人合気会は、合気道の総本山といえる存在で、植芝家により代々受け継がれています。宮本師範は合気会本部道場のベテラン先生で、現在もなおここで定期クラスを受け持つ傍ら、私達が実施した2017年と今年のプロヴディフ2019を祝う公式プログラム「フォーカス:ジャパニーズ・カルチャー」のセミナーに挙げられるような催しのために、海外にも赴いていらっしゃいます。
プロヴディフ2019の合気道セミナー
こうしたセミナーで人々が一堂に会す際に私が個人的に目にするのが、たいていにおいて自らの周囲の環境やお互いの存在により意識を傾け、実践にもともと備わる特定の振る舞いや敬意を保持する実践者達の姿です。
それは技を行う以前に向けられる、動き、反応、注意への意識です。この実践法は、日常生活に直に反映され、畳の上と外を問わず注意力を研ぎ澄ます方法、そして自己および他者の存在に対する認識を高める術を私達に教示してくれます。こうした意識は、修練の積み重ねと、実践が実生活に結びついてはじめて体得できるものなのです。
合気道の定義は、攻撃者を怪我から守ると同時に、自己を防衛できることにあります。日々の基本技の稽古と、それをさらなる高度なレベルへと発展させることが、合気道実践者の誰もが志す目標です。
こうしたセミナーは、現在日本で行われている本場の合気道教室の雰囲気や真剣味を醸し出し再現するのに理想的な場を提供しています。
また他の国々や道場の人達、異なるレベルや年齢層の人達、日常の教室で普段稽古を共にすることのない人達が交流することにより、各回のクラスで上達と理解と学びが促される絶好の環境が生まれます。
たとえ文化、国、背景が異なろうとも、植芝盛平大先生が考案された基本の形に則って技を行うことで、怪我を負うことなく楽しみながら武道に取り組めることから、合気道の実践は実に巧みに社会に溶け込んでいるといえます。
今回のセミナーで、宮本師範は基本と修練の積み重ねの重要性を強調されました。日々こつこつと基本の稽古を行うことが、合気道の高度な理解と実技能力の獲得につながるからです。
合気道を始めたり、あるいは合気道に魅せられたきっかけは、何かしらの運動を探していているうちに次第にその哲理に関心を抱くようになった人、武道の側面に興味を持った人もいれば、その他には居場所を見出そうとしていた人など、非常に様々です。
理由は個々に違っても、その実践とそれが生み出す恩恵は、極めて一目瞭然です。自信、自己認識、健康、幸福感、帰属意識はもちろんのことですが、真の宝物といえるのが、知識を分かち合えるということ、そして長年たゆまぬ努力を重ねて継続し、いつしか成長と開花を遂げたいという熱意がある限り合気道は実は全ての人のために存在するということです。
合気道のプロヴディフ社会への融合をより推し進めていくことが、私達のセミナーの狙いであり、引き続き宮本師範をお招きし、今後長年にわたりプロヴディフが宮本師範にとっての定期訪問先となれば非常に幸いです。熱心な合気道実践者の方々のお力と、社会からの支援と助力を得ながら、プロヴディフにおいて合気道がますます発展していくことが、私の切なる願いです。
欧州文化首都プロヴディフ2019の国際合気道セミナーには、ルーマニア、ウクライナ、イスラエル、ブルガリア国内各地の道場からの参加がありました。時間に余裕があり観光に出かけた参加者は、即座に街の変化に気づき、大勢の観光客で賑わい、以前に増して明るく、どこかしら幸福感漂う印象を得ました。
当合気道プロジェクトの運営支援のために特別に駆けつけてくださったボランティア・ブリッジ・プロジェクトの日本人ボランティアにお手伝いいただきました。この青年は、以前にプロヴディフを訪れたことがあり、またソフィアで留学生として暮らした経験があります。彼も前回訪れたときから、街が見違えるように変わったと述べていました。
ボランティア・ブリッジ・プロジェクトの米内悠さんと谷口真由美さんに感謝いたします。米内悠さんは、ブルガリアの人達とコミュニケーションを取り合ったり、合気道について学んだりしながら楽しく過ごしていた様子で、合気道についてより豊富な知識を身につけて帰国しました。米内さんとご一緒できたことを、嬉しく思っています。
公益財団法人合気会、EU・ジャパンフェスト日本委員会、プロヴディフ2019、スポンサーのビオフレッシュ・コスメティックス社、ボランティアをしてくださった米内さん、お運びくださいましたソフィアの在ブルガリア日本大使館広報文化担当 西村美咲さんに加え、当セミナーの準備にあたりお力添えくださった他の皆様に心からの謝意を表します。最後になりますが、招聘に応じられ、このような素晴らしい学びの機会を与えてくださった我らが先生、東京・合気会本部道場八段宮本鶴蔵師範に感謝申し上げます。
<山田ルチアナ>
2005年よりプロヴディフ在住、複数のスポーツクラブにて主に児童を対象とした指導を始める。
2017年からはスポーツ・コンプレックス・シラで専任インストラクターとして勤務し、パーソナルトレーニング、グループ教室、合気道を担当、子供および成人向けの定期レッスンを実施している。
当セミナー会期中に恩師から四段の免状を直々に授与される。