北斎から間まで

エヴァ・ヨハンソン|Always on a Sunday
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京都での視察旅行にて 日本側アーティストたちと

私達の「日本‐スウェーデン文化交流プロジェクト」の根源は、もしかして50年前に既に始まっていたのかもしれません。その当時スウェーデン北端のある学校で、幼い少女アニータ・ミッドビヤールは、 絵の才能を称えられ賞を取りました。その時の賞品が、北斎の本だったのです!アニータは、アート集団「Always on a Sunday」の仲間である私達に語ってくれました。その本を開いた時、 異国の風景を成す繊細な線や間にどれほど圧倒されたことか。その絵画がいかに好奇心や想像力、尊敬の念を呼び覚ましたことか、そしてその気持ちがいつまでも続いているということを!

「Always on a Sunday」はスウェーデンのウメオを拠点とするアートグループで、多様な専門職を持つ女性で構成されています。アーティスト、セラピスト、教師、大学講師、医師で成る私達は、 美術や工芸に対する深い関心により皆ひとつに結ばれています。20年間にわたり、私達は「いつも日曜日に」集まり、互いに刺激し合い、創作活動をともにし、芸術的な小旅行に出かけ、文化的ネットワークを築いてきました。 2014年には、古今を含めた日本美術に焦点を当て、私達の芸術活動のインスピレーションの源にすることに決定しました。幅広い関心を掴むことを目指し、このプロジェクトを「北斎からマンガまで」と名付けました。

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小さな浴衣ワークショップ

全体的な目的として、日本の文化的印象や表現の調査及び共有と、日本でのアーティストとの持続可能な交流の確立を掲げてきました。これらの目標の実現に向けて、私達は文献調査と美術研究、日本での視察旅行、さらには我が協会主催による木版画イベントを実施しました。こうした試みの成果は、公開レクチャーや展覧会を通じて発表されています。また私達は、松尾郁子さん、樋田明子さん、伏木野芳さん、藤井良子さん、飯尾梓沙さん、 谷澤紗和子さんの6名の日本人アーティストをスウェーデンに招聘し、もてなしました。これらの作家は共同でウメオ市内においてワークショップと展覧会を開きました。

まず私達は、葛飾北斎、安藤広重、喜多川歌麿といった巨匠浮世絵師について調査を行いました。その結果、江戸時代に花開いた極めて精緻なこの芸術に対し、さらなる洞察を深めました。 背景に関する調べでは、19世紀中期に日本が貿易を解禁し港が開放された際、ヨーロッパで日本の浮世絵に対する多大な関心が寄せられていたことが分かりました。私達はヨーロッパにおけるいわゆる「ジャポニズム」と、 日本美術がヨーロッパ印象派とアールヌーボーに与えた影響について掘り下げ、レクチャーを行いました。ウメオ美術大学、ペチャクチャナイト、ウメオ美術協会、グルッべ図書館、ブックカフェ・ピルガータンなどの数カ所の会場で、 歴史あるこの文化的概念について熱烈に語りました。このレクチャーは『浮世絵と日本の江戸時代、19世紀末期ヨーロッパにおけるジャポニズム』と題して行われました。

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ワークショップ参加者と

その後、アニータ・ミッドビヤール、アン=マリ・シモンソン、エルサ・ベンクソン、ルンドマン・レーン、エヴァ・ヨハンソンの当協会5名のメンバーは、2014年3月30日から4月13日までの桜の季節に、 日本での素晴らしい視察旅行を実現しました。最初の週に訪れた京都では、満開の桜の木の下で、苔庭や竹林、内容豊かな博物館、見事なお寺や神社などを巡り、感銘を受けました。京都では京都市立芸術大学を訪問する機会を頂き、 松尾郁子さん、妹の德恵さん、その作家仲間が私達を案内してくださいました。連れていってもらった京都最古の画材店では、和紙、桜の版木、彫刻刀や顔料などの画材を探索し、購入することができました。

日本滞在1週目のピークとなったのが、大阪のアトリエ・ログハウスを運営する橋本圭代教授と姪の松尾郁子さんご一家が開いてくれたパーティーです。 ご家族とそこに集まったアーティスト達の心温まるおもてなしが、私達に興味深く友好的な関係を築いていく可能性をもたらしました。私達はここで、絵画、ジュエリー、テキスタイル、切り絵をそれぞれ専門としながら、 「間」の概念に向き合う現代美術家達と出会ったのです。

さらに私達は、炎の達人神崎紫峰さんを訪ねるため、信楽まで足を伸ばしました。神崎紫峰さんは、今なお穴窯焼成の手法で制作を続ける陶芸家です。ここでの経験は、アン=マリ・シモンソンが「伝統の日本陶芸」をテーマにウメオで行った公開レクチャーで発表されました。

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アニータ・ミッドビヤールによる版画作品

京都から新幹線に乗り、2週目を東京で過ごしました。ここで経験した様々な冒険のひとつに、現代美術家で研究者でもある梅原麻紀さんが私達を美術館や現代美術のギャラリーに案内してくださいました。 また私達は前駐日スウェーデン大使夫人エヴァ・ヴァリエさんからのご招待を受け、スウェーデン大使館を訪問し、スウェーデン作家による手ぬぐい展「北欧流おもてなし『FIKA』の心」のオープニングに出席する機会にも恵まれました。

新たな出会いの中から、6名の日本人作家がウメオを訪れ、2014年10月10日から18日まで1週間にわたる文化交流を行いました。私達はウメオ大学美術デザイン建築学部を案内する見学ツアーを組みました。 また作家達を連れて美術館の見学や、郊外への小旅行にも出かけました。私達の日本の友人達は、ジュエリー、テキスタイル、陶芸を含む『MA(ま)』と題したグループ展を披露したほか、 参加者全員で作る「小さな浴衣(A little yukata)」のワークショップを開催し、大きな反響を得ました。

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文学フェスティバルLittfestでのマンガワークショップ

私達Always on a Sundayのメンバーは、まだまだ木版画の初心者ではありますが、この1年で版木彫りや版画摺りの技術について知識を深め、練習を重ねてきました。こうして得られた経験は、様々なワークショップの場で共有されました。作品は、ウメオ市内の公共空間を舞台にグルッべ図書館で9月29日から10月25日まで、ブックカフェ・ピルガータンで10月28日から11月30日まで開催された2つの展覧会で展示されたのです。

EU・ジャパンフェスト日本委員会事務局からの寛大なご支援のおかげで、私達は日本とスウェーデンを結ぶ交流の機会を得ることができました。それは芸術、社会的関係、習慣、思考を含めた豊かな交流となりました。大局的な観点から、私達はこのプロジェクトを『北斎から間まで』に改名したいと考えています。「間」は「可能性に満ちた無の空間」であると確信しているからです。招待作家が帰ってしまった今、私達は寂しく感じる一方で、 彼女達が不変の影響を残していってくれたのです!

私達はこうした経験や新たなネットワークを得られたことを大変嬉しく感じています。私達の頭の中は日本に触発されて生まれた創造性に満ち溢れています。私達の家、そして心の扉は、 今後日本とのさらなるコラボレーションや交流に向けて、いつでも開かれています。